ファイナンシャルプランナー歴25年超の深田晶恵さんが、若い世代に向けて「今のうちに」知っておきたいお金の知識を伝授します。今回のテーマは「確定申告」。35歳までに知っておきたい確定申告の2つのケースについて解説します。
例年2月中旬から3月中旬までの時期は、新聞や雑誌、WEB記事など多くの媒体で確定申告に関する記事が掲載されます。
その多くが申告によって税金の戻りを受けられる「還付申告」について解説する記事です。税金が戻ってきたり、少なくなったりするのは誰でもうれしいので、よく読まれると聞きます。
還付申告の代表的なものは住宅ローン控除や医療費控除です。
でも、住宅ローンを組んでいたり、入院や手術で多額の医療費がかかっていたりしないと、受けられない控除です。
そのため、残念ながら若い世代には身近ではないかもしれません。
bizbleの主な読者層である20代後半~30代前半のみなさんが税金の戻りを受けられるのはどんなケースでしょうか?
今回は、若い世代向けの確定申告のポイントをお話しします。
2つのケースに当てはまる?
税金の記事では「控除」という言葉をよく目にします。
「控除」とは、「差し引くもの」。
税金は額面の給与収入に課税されるわけではなく、さまざまな「控除」を差し引いた後の「所得」に対して、税率を掛けて課税される仕組みです。
「控除」の部分には税金がかからないわけですから、言い換えると「控除」とは「非課税の枠」。
つまり、税金を減らしたい、取り戻したいと考えるなら、「非課税の枠」の使い残しは絶対あってはいけないことなのです。
次のようなケースに該当するなら、確定申告をしましょう。
ケース1
大学生の時、国民年金保険料の「学生納付特例」を受け、社会人になってから保険料を追納した。
ケース2
病院に通院するほどではないけれど、体調不良のとき薬局で市販薬を買うことが多かった。
国民年金保険料を追納すると、税金が戻ってくる!
厚生年金や健康保険の保険料は、「社会保険料控除」の対象です。
給与から天引きされている社会保険料は、勤務先が年末調整をしているので、確定申告は不要です。
大学生の時に「学生納付特例」を受け、社会人になってから追納した国民年金保険料も社会保険料控除の対象になります。
追納分を勤務先で年末調整をしていないなら、確定申告をして控除を受けましょう。
所得税の一部が戻ってきて、6月以降にかかる住民税が少し安くなります。
2021年度の国民年金保険料は月額1万6610円で、1年分だと19万9320円です。これを昨年追納した場合の節税効果を試算しました。
所得税の計算期間は、1月1日から12月31日です。
2021年の所得税の確定申告をすると、控除を受けることによって安くなった所得税の還付を受けられます。
たとえば、年収400万円の人が1年分の国民年金保険料の追納をすると、所得税の還付は約1万円です。あてにしていなかった1万円が戻ってくるのはうれしいですね。
1月~12月の所得にかかる住民税は、会社員なら翌年6月の給与から12カ月にわたって天引きされます。ですから、今回確定申告をすると、今年の6月からの住民税の天引き額が年2万円安くなるわけです。
実際の節税額を目にすると確定申告のやる気がでてきますね!
昨年はたくさん薬を買った人は、セルフメディケーション税制で申告
次にドラッグストアで市販薬を買うことが多かったケース2を見てみます。
多額の医療費がかかった場合、「医療費控除」を受けることができるのですが、かかった費用の全額が控除を受けられるわけではなく、足切り額があります。
足切り額は、10万円または所得の5%です。
「所得」とは、会社員の場合、給与収入から給与所得控除を引いたもの。
年収300万円未満の人の足切り額は「所得の5%」で、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」に5%を掛けると足切り額を求めることができます。
わかりにくいので、概算でお伝えします。給与収入が300万円以上の人は、医療費控除の足切り額は10万円です。
250万円なら8万3500円、200万円なら6万6000円です。
医療費控除は足切り額を超えた部分が対象なので、例えば足切り額10万円の人なら15万円の医療費がかかっても、控除の対象は5万円。なかなかハードルは高いといえます。
そこで知っておきたいのがもう少しハードルが低い「セルフメディケーション税制」です。
ごく簡単に言うと、ドラッグストアなどの薬局で、特定の薬を1万2000円超買うと、超えた分について控除を受けることができるというもの。
2017年に医療費控除の特例として施行された制度です。
条件は2つ。
まず1つ目は、対象となるのは「スイッチOTC医薬品」という薬に限られていること。
該当の薬を買うと、レシートに「セルフメディケーション税制の対象です」と記載がありますし、薬の外箱にも「税控除対象」のマークがあるので、注意してみてみましょう。
風邪薬や頭痛薬など身近な薬が多数対象となっています。
もう1つの条件は、健康管理の取り組みを行っていること。
たとえば、インフルエンザの予防接種を受けたり、定期健康診断やがん検診を受けたりなど、健康の保持増進及び疾病の予防をしている人が対象となります。
一定の取り組みを行ったことを証明する書類が必要で、予防接種の領収書や健康診断などの結果通知書を申告時に提出します。
確定申告をすると、税金が戻ってくるメリットはもちろんのこと、税金の仕組みがわかるメリットもあります。該当する人は、ぜひ申告してみてください。