自分で考え、自分で責任を持ち、自分で道を切り開く――。FIRE達成者に共通する特徴とは

自分で考え、自分で責任を持ち、自分で道を切り開く――。FIRE達成者に共通する特徴とは

ライフ・マネー

三菱系の大手企業に勤めながら徹底した倹約と資産運用を続け、30歳でFIRE(Financial Independence, Retire Early=経済的自立と早期退職)を実現した穂高唯希さん。FIREという生き方の魅力やFIREがいま注目される理由、FIREと従来の早期退職の違い、FIREの目指し方などについて、実体験を元にお伝えします。

「これさえやれば」という絶対的手法は存在しない

株式投資やFIREについて情報発信したり書籍を発刊したりしてきて、思ったことがあります。

それは「自分の頭で考える日本人が、以前と比べて大きく減ったのではないか」ということです。

第三者の情報はそのまま受け入れるものではなく、自分の頭で思考をめぐらす「たたき台」でしかない、と筆者は語る=筆者提供
第三者の情報はそのまま受け入れるものではなく、自分の頭で思考をめぐらす「たたき台」でしかない、と筆者は語る=筆者提供

「これさえすれば必ず資産形成が成功する」「これさえすれば絶対FIREできる」――。

そのような簡明で、ややもすると安直とも言えるような、いつの時代も通用する絶対的な手法というものは、この世に存在しないと思っています。

 

もちろん「成功しやすくなる方法」や「成功に近づくための王道」というものは存在します。

ただし、本人の努力や自分の頭で考える力は必須です。

コツコツ継続する力も必要でしょう。

エッセンスを吸収し、それを応用して自分に適した方法に落とし込む力は欠かせません。

努力なしで成功できる甘い話はない、と言い切ってもよいでしょう。

 

必ず成功する秘技が仮にあるとすれば、世間に広まり始めた時点で往々にして陳腐化します。

投資でも同様で、革新的な手法があっても、多くの人が同じことをすれば、その手法のパフォーマンスは平均的な値に回帰するのです。

 

また、「〇〇さんが言っているから□□だ」という第三者からの情報があった時、疑問を持たずに受け入れるのではなく、あくまで自分で検証し、真偽を確かめることも、特に現代では望ましい情報処理の仕方でしょう。

 

自分の五感を通して直接的に知り得た情報と違い、第三者の情報というのは自分で物事を考えるたたき台でしかありません。

情報というものは、よほど洗練された出どころでない限り、発信者のポジショントーク・意図・誘導といった要素が入り込んでしまいます。

スマホの普及、SNSの発達などにより、この10年余りで私たちは格段に情報を手に入れやすくなった
スマホの普及、SNSの発達などにより、この10年余りで私たちは格段に情報を手に入れやすくなった

そのため、第三者の情報をそのまま自分の中に取り込むと、発信者の意図を無防備に、盲目的に受け入れることになります。

自分で検証しない限り、それは主体的な情報収集ではなく、単に受動的に、情報に踊らされているだけです。

 

物理的・時間的な制約から、情報すべてを都度検証するのは難しい部分もあるでしょう。

しかし、上に述べたような意識は少なくとも持っておくべきだと私は思います。

でないと、踊らされるだけの操り人形のような人々が増えてしまいます。

 

現代はミサイルを飛ばさなくとも、インターネット上である種の情報を拡散すれば、多くの人々を扇動できてしまう時代です。

適切に情報を処理できない人々が増えると、それだけ社会の脆弱(ぜいじゃく)性が増すことを意味します。

半藤一利さんが説いた「勉強」の必要性

先日、「知の巨人」とも呼ばれる半藤一利(はんどう・かずとし)さんの追悼番組を目にする機会がありました。

半藤さんは以下のような趣旨を説いていました。

 

「若い世代で、自分一人で国家目標を4つ立てられるような人材が日本からいなくなってしまった。国家目標は政府に任せるものではない。国民一人ひとりが国家目標を立てないと。日本人全体のレベルが下がってしまった。どうすればいいか。それは勉強ですよ。勉強しないとダメ。教育によって国というものは立つ。経済によっては立たない」

「日本のいちばん長い日」「ノモンハンの夏」など昭和史に光をあてた作家の半藤一利さん。2021年1月に亡くなった=2017年、朝日新聞社
「日本のいちばん長い日」「ノモンハンの夏」など昭和史に光をあてた作家の半藤一利さん。2021年1月に亡くなった=2017年、朝日新聞社

最近の世相を見ていて、「政府は国民を映す鏡にすぎない」ということを知らない、または忘れている人が以前より増えたのではないかと思います。

政府は国民の親でもなければ、庇護者(ひごしゃ)でもありません。

 

自分の代わりに議会で議論をする国会議員を国民一人ひとりが選び、そしてその国会議員から政府の役割を担う人が選ばれるわけです。

つまり、衆院議員・参院議員などの政治家を選んでいるのは、ほかならぬ国民です。

政治家は国民が選び、その国民の意図を反映した結果が政府であり政治家です。

日本は「主権は国民にある」とする国民主権の国家であり、国民を政治権力の責任主体とする制度です。

衆院本会議の様子。コロナ禍に対応する経済対策などを盛り込んだ過去最大の補正予算案が賛成多数で可決された=2021年12月15日、朝日新聞社
衆院本会議の様子。コロナ禍に対応する経済対策などを盛り込んだ過去最大の補正予算案が賛成多数で可決された=2021年12月15日、朝日新聞社

政府が万能で、「これさえすれば必ず経済がよくなる」「これさえすれば豊かな老後を保障する」「これさえすれば雇用環境が保障される」といった絶対的な秘技を国民の代わりに編み出してくれるとは限りません。

 

自分の頭で考え、自分で自分の身を守る手立てを考えるのが、まずは基本姿勢です。

そして、そういったことを考えるために必要になってくるのが、知識であり経験でしょう。

それこそまさに、半藤一利さんがおっしゃるところの「勉強」によって獲得できることではないでしょうか。

 

教育にしても、「個性をつぶす」「考える力を奪う」「言いたいことを言えない」という人材育成は望ましくありません。

「個性を育む」「自分の頭で考える力を養う」「言いたいことを言える」という教育で、自主性と主体性と健全性を持った人材を社会全体で育てていくことが、個人レベルでも国家レベルでも重要なことではないでしょうか。

国は金融ではなく、教育によって立つ

私はFIREしてから、資料館や書物を通じて、現代日本の礎を築いた人々について理解を深める機会がありました。

本当に素晴らしい人々が今の日本をつくったと言っても過言ではないでしょう。

国の未来を考え、子の未来を考え、行動してきた人々がいたからこそ、今の日本があるわけです。

それを決して忘れてはいけないと思います。

現状は労せずして得られたものではないのです。

筆者が訪れた場所の1つ、青函トンネル記念館(北海道福島町)。青函トンネルは建設開始から27年かかり、1988年に開通した。作業員のべ1200万人が関わり、34人が亡くなった。記念館はトンネルの青森側と函館側に1つずつある=筆者提供
筆者が訪れた場所の1つ、青函トンネル記念館(北海道福島町)。青函トンネルは建設開始から27年かかり、1988年に開通した。作業員のべ1200万人が関わり、34人が亡くなった。記念館はトンネルの青森側と函館側に1つずつある=筆者提供

過去の偉人たちが連綿と紡いできた経済的・文化的・技術的遺産があるからこそ、ハングリーさや危機意識、自分で考える力がなくとも、現代日本では最低限度の生活が制度上は保障されています。

生を営むことができます。

いや、「営むことができた」と過去形にしないといけない日が、そのうち来るかもしれません。

 

人間には「追い込まれたり、窮地に陥ったりしないと稼働しない脳の領域」があると思います。

日本の先人が築いてきた平和や経済的遺産にあぐらをかいていれば、いつか遺産を食いつぶしてしまうでしょう。

何もせずに手に入るものや、何もせずに成功できる方法はなく、政府が何もかも「おんぶに抱っこ」でやってくれるわけでもありません。

1968年の日本の国民総生産(GNP)が西ドイツを抜き、世界2位(共産圏除く)になったことを報じる1969年6月11日付朝日新聞朝刊。以来、2010年に中国に抜かれるまで、日本は世界第2の経済大国の地位を保ってきた
1968年の日本の国民総生産(GNP)が西ドイツを抜き、世界2位(共産圏除く)になったことを報じる1969年6月11日付朝日新聞朝刊。以来、2010年に中国に抜かれるまで、日本は世界第2の経済大国の地位を保ってきた

自分の頭で考えて、自分で責任を持ち、自分で道を切り開く。

FIRE達成者においても、傾向として共通するのはこのような特徴だと言えるでしょう。

 

金融というのは本来、主役ではなく、あくまで黒衣です。

私は株式投資が原動力の1つとなってFIREしましたが、金融資本は手段でしかなく、本来的には主役になり得ない、いや、なるべきではないと思っています。

 

それは国の経済を語る上でも同様でしょう。

本来、金融は経済を潤滑に営むための黒衣でした。

いわば「教育によって国というものは立つ。金融によっては立たない」。

 

5年以上にわたりブログで米国株の特徴などを発信してきました。

すっかりブームとなった今、時にあえて一歩引いたスタンスを取っています。

読者に盲目的になってほしくないからです。

熱が高まると、人間は盲目的になりがちです。

 

FIREしてからも、勉強をし、経験を蓄積し、それを何らかの形で家族や地域、社会に還元する。

そういった生き方を、様々な活動を通じて私自身も目指していければと思っています。

 

(このコラムは月1回掲載予定です)

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