投資の必要性を耳にする機会が増えました。でも「投資ってギャンブルとは違うの?」「つみたてNISAは具体的にどう始めればいい?」――。そんな疑問を抱いたまま、一歩踏み出せない方もいるのではないでしょうか。元三菱UFJ銀行員で、チャンネル登録者40万人超の資産運用YouTuber・小林亮平さんが、資産形成の基礎知識についてお伝えします。
とにかく楽ちん。インデックス投資の長所とは
「資産運用を始めてみたいけど、面倒なのは嫌だし、何をすればいいか分からない!」
そんな方はぜひ、インデックス投資で資産運用を始めてみましょう。
インデックス投資を初めて聞く方もいるかもしれませんが、資産運用の世界ではスタンダードな投資法であり、手軽にスタートできるので初心者の方にもおすすめです。
「インデックス」は日本語に訳すと指数のことです。
ここでは「いろんな会社の株価の平均点」と思えばOKです。
例えばニュースで見かける日経平均株価は、ユニクロを展開するファーストリテイリングや通信系大手のソフトバンクグループなど、日本を代表する企業225社の株価を平均したものです。
他にも東証株価指数(TOPIX)やS&P500(アメリカの大企業500社を網羅した株価指数)など、世界には様々な指数があります。
このように、多くの企業の株価の平均点である指数と同じ動きをする投資信託を「インデックスファンド」と呼びます。
投資信託とは、様々な株式などが袋詰めになった商品です。
例えば日経平均株価に連動するインデックスファンドを1つ買うだけで、国内の大企業225社の株価の平均点に投資することができます。
ちなみに、インデックスファンドとよく比較される投資信託に「アクティブファンド」があります。
こちらは「指数を上回る成果を目指す」商品です。
アクティブファンドは、ファンドの運用担当者が手間をかけて投資する会社を選ぶため、一般的にインデックスファンドより手数料が高いです。
アクティブファンドの長所は、インデックスファンドより多くの利益を得られる可能性がある点です。
一方で短所もあり、運用会社の投資方針や運用担当者、運用実績などを調べ、いいファンドを探す手間がかかる点が挙げられます。
このため「手間をかけたくない」という人には不向きでしょう。
インデックスファンドを買って運用することを「インデックス投資」と言います。
とにかく楽ちんな投資がしたい人は、インデックス投資から始めてみることをおすすめします。
投資信託は金融機関によっては100円でも買えるので、インデックス投資はおこづかい程度の資金から始めることができます。
世界全体に投資して、経済成長の恩恵を受けられる
インデックス投資で本当にお金が増えるのか、疑問に思う方もいるはずです。
次のデータをご覧下さい。
これはMSCI ACWI Indexという、全世界株式の代表的な指数の過去のグラフです。
先進国23カ国、新興国27カ国の株式市場の時価総額の大きさで平均したものですが、34年前の1987年を起点に見ると、右肩上がりが続いています。
つまり、世界中の会社に分散投資して、その株をずっと持ち続けておくだけで資産が増えたことになります。
国内株式の代表的な指数であるTOPIX(東証株価指数)と比べると、その差は一目瞭然です。
このグラフの起点である1987年が、日本にとってはバブル期だったこともありますが、現在に至るまでTOPIXはほとんど成長していません。
一方、全世界株式に投資しておけば、約30年間で7倍近くにまで増えています。
もちろん短期で見ればマイナスになる時期もあるものの、長い目で見て投資を続ければ、利益を十分期待できるしょう。
全世界株式が今後も期待できる主な理由を説明します。
全世界株式の指数と世界全体の名目GDP(国内総生産)はおおむね連動していて、世界全体のGDPは今後も上昇していくと予想されているためです。
GDPは「経済の規模を表すものさし」とも言われます。
全世界株式に連動する指数と世界の名目GDPの推移を見ると、共に上昇してきたことが一目で分かります。
GDPが伸び続ける要因としては、人口増加や新たなテクノロジーの誕生などがあると言われています。
特に人口については、世界全体で見ると2100年まで増え続ける予測があるので、今後も世界経済が成長する後押しになります。
私たちは全世界株式を買うだけで、その恩恵を受けることができるのです。
この全世界株式こそ、限りなく世界全体に分散投資するという意味で、資産運用における王道とも言われます。
では全世界株式でどれくらいお金が増えるのでしょうか。
過去約30年間の平均リターンは年6%程度のプラスでした。
年6%というと、1万円投資したら、来年には600円くらいの利益が出ているイメージです。
近年の株式市場が比較的好調だったことを差し引くと、今後は年4~5%程度の平均利回りを見ておくのがいいでしょう。
このため「数年でお金が倍になる」といったものではなく、ゆっくりと増えていくものだと認識しておく必要があります。
それでも、長く運用を続ければ、将来的には複利効果もあって大きな利益を期待できます。
時間を味方につけてじっくりと増やしていきましょう。
ちなみに、全世界株式の投資信託で最も人気があるeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)は、今回紹介したMSCI ACWI Indexに連動しています。
MSCI ACWI Indexにおける各国の構成比率を見ると、現状は米国が57.8%とかなり高くなっています。
構成比率は各国の株式市場の時価総額に応じて変わります。
今は世界的に見て、それだけ米国の株式市場の規模が大きいと言えるでしょう。