「推し」の根底にはあるものとは。Z世代は「ステレオタイプ」な恋愛に疑問?

「推し」の根底にはあるものとは。Z世代は「ステレオタイプ」な恋愛に疑問?

ライフ・マネー

若い世代の「価値観」は新たな環境の変化でどんどん進化を繰り返すといわれます。「おひとりさま」や「草食系男子」「年の差婚」などの言葉を世に広めたマーケティングライターの牛窪恵さんが、「ゆとり世代(さとり世代)」、「Z世代」の考え方、ものの見方について読み解きます。

マーケティングライターで、世代・トレンド評論家の牛窪恵(うしくぼめぐみ)です。今回も、前回に引き続き、「Z世代の恋愛観」についてご紹介します。

2021年新語・流行語になった「推し活」

突然ですが、皆さんは「推し活」の経験がありますか?

「推し」とは、他の人に薦めることや、誰かに薦めたいほど気に入っている人・モノとのこと。そこから転じて、「推し活」は推しを応援すること、とされます。
数年前から、SNSなどを中心に盛んに使われ始め、2021年の「新語・流行語大賞」ではトップ10候補の「ノミネート30語」に選抜されました。

ちなみに、本連載のテーマである2021年の流行語「Z世代」(私の定義で現17~26歳)は、最終的にトップ10にランクイン。また、大賞に輝いた「リアル二刀流/ショータイム」は、Z世代より1歳上の米国メジャーリーガー、大谷翔平選手(27歳/ゆとり世代)由来の言葉です。

「2021ユーキャン新語・流行語大賞」のトップ10に「Z世代」が選ばれ、「Z」の文字をポーズで示すZ世代の受賞=2021年12月1日、東京都千代田区、朝日新聞社
「2021ユーキャン新語・流行語大賞」のトップ10に「Z世代」が選ばれ、「Z」の文字をポーズで示すZ世代の受賞=2021年12月1日、東京都千代田区、朝日新聞社

一般に「推し」の対象は、アイドルやお笑いタレント、アニメ、キャラクター、漫画、ゲームから、歴史や鉄道、スポーツなどと幅広く、ニッチな分野では、文具や植物(例:多肉)、地形などさまざまで、数えきれないほど多く存在します。

「昔からいた『〇〇ファン』や『××オタク』と何が違うの?」と首をひねる方もいるでしょう。ですが、「推し」は従来のファンやオタクとは違う、さらに一歩進んだ概念です。この部分は、後ほど詳しくご説明しますね。

 

「『推し』がいる」と答えたZ世代は98.4%

 

推しや推し活が、若い世代に一般化した様子は、複数の調査結果から分かります。

 

たとえば、あるマーケティング会社(RooMooN)が運営する、女子高生・女子大生のマーケティング集団(「Trend Catch Project」)が、「推し活」について調査したアンケート結果(2021年/図1)。調査対象は、ほとんどがZ世代にあたる女子高生・女子大生です。

このなかで、「『推し』がいますか?」と聞かれ、「いる」と答えた人は、98.4%と大多数。推しの対象は、「男性アイドル(日本および韓国)」が全体の約4割、続いて「俳優」「YouTuber」「歌手」や「アニメ」「漫画」などが挙がりました。

女子高生・女子大生に聞いた「推し活の対象は?」への回答結果=<a href="https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000017.000057887.html">Trend Catch Project調べ</a>
女子高生・女子大生に聞いた「推し活の対象は?」への回答結果=Trend Catch Project調べ

2020年に私が取材したZ世代の一人、女子大生のAさん(22歳)の推しは、大人気の韓国アイドルグループ「BTS(防弾少年団)」でした。

「イケメンだからとか、歌がうまいからとか、そんなレベルじゃない。BTSは、私の人生のすべて」

5年前の高校時代、その魅力に取りつかれたそうです。

 

彼女いわく、BTSは弱小事務所からデビューし、不遇な環境でも高いプロ意識を持って、歌にダンスにトークにと真剣に取り組んできた。その姿を愛でるように見守り、同じく「BTS推し」の友人らとともに声援を送り続けてきました。

新型コロナの感染拡大前までは、韓国にある彼らの事務所の前まで何度も出向き、「ああ、この空間に、3日前には『JIN(BTSメンバーの1人)』がいたんだ」などと想像するだけで、「最高に幸せ」になれた。渡航費を稼ぐため、アルバイトをいくつも掛け持ちしたといいます。

推しの対象は「実在の人物」? それとも「キャラクター」? 男女で回答にちがい

一方、推しをめぐる「男女の違い」を明らかにしたのが、ネオマーケティングによる「推し活に関するアンケート調査」(2021年)。

この調査で顕著なのは、「キャラクター」推しの男女差です。とくに10、20代(含・Z世代)では、女性の7割以上(70.7%)が、推しの対象を「実在の人物」と答え、「キャラクター」との回答は38.0%のみ、両者の差は30ポイント以上でした。

 

ところが、同世代の男性では、「実在の人物」が半数程度(53.3%)に留まり、2位の「キャラクター」(48.7%)との差が、わずか4ポイントほどしかなかったのです。

10、20代男女に聞いた「推し活の対象は?」の回答結果=<a href="https://neo-m.jp/investigation/3075/">ネオマーケティング調べ</a>
10、20代男女に聞いた「推し活の対象は?」の回答結果=ネオマーケティング調べ

「アイドルは裏切るけど、(アニメの)キャラは裏切らない」と力説するのは、京都のメーカーで働く、Z世代の男性Bさん(24歳)。

中学に入った年(2010年)、AKB48の「さしこ(指原莉乃さん)」にハマったという彼。毎日彼女のブログを読み、同じCDを10枚以上買って握手会の行列にも並び、指原さんを主役にした『月刊ヤングマガジン』(講談社)の連載も欠かさず読んだといいます。

 

ところが2年後の2012年、ある週刊誌がスキャンダルを報じます。指原さんが過去に元ファンの男性と交際していたのではないかとの報道。Bさんはそれまで、AKB48のいわゆる「恋愛禁止ルール」を信じていたため、「裏切られた!」と大きなショックを受けたそうです。

 

その後しばらく「推し」はいませんでしたが、大学卒業後のある日(2019年)、テレビをつけると、たまたまアニメ「ソードアート・オンライン アリシゼーション(War of Underworld)」(TOKYO MX)を放映中で、そこで天使のように微笑むヒロイン・結城明日奈(アスナ)に「魂を全部持っていかれた」とのこと。

「アスナは、才色兼備で料理上手、お嬢さま育ちで、端からは悩みなんて一切ないように見える。でも実はコンプレックスの塊で、人知れず葛藤してる。そういうとこがまた放っとけないよなって、アスナ推しの“みんな”とTwitterで盛り上がるんです」

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