「自分に合った会社を探す」のはやめよう。転職活動がうまくいく人の共通点とは

「自分に合った会社を探す」のはやめよう。転職活動がうまくいく人の共通点とは

キャリア

「転職」がより身近な存在になっています。あふれる転職情報にどう向き合い、自分事として考えていけばいいのでしょうか。パーソル総合研究所の上席主任研究員として、これまで多くの社会人のキャリアをみつめてきた小林祐児さんが、転職について解説します。今回は「転職活動でマッチング思考をやめるべき理由」についてです。

転職活動で直面する「求職時リアリティ・ショック」

長く続いていた緊急事態宣言が久しぶりに解除され、各社、オフィスへと出社する人が増えてきたようです。

転職活動を控えてきたけど、いよいよ本格的に動き出そう、という方もいると思います。

今年の夏から続けてきたこの連載でも、いよいよ転職の本丸とも言うべき、「転職活動」について話していきましょう。

緊急事態宣言が解除された朝、通勤通学する人たち=2021年10月1日、JR博多駅前、朝日新聞社
緊急事態宣言が解除された朝、通勤通学する人たち=2021年10月1日、JR博多駅前、朝日新聞社

今回のキーワードを先んじて述べれば、転職活動の肝は「脱・マッチング思考」です。

 

多くの転職者は転職を「今の自分に合った会社を探すもの」だと捉えています。

例えば「今のスキルが生かせる職場」といったイメージです。

人材紹介サービスの基本的なビジネスモデルも、経済学における需給マッチングの推計も、考え方の土台には、企業の求人に見合った人を「マッチ」させる発想があります。

言わば、転職についての普通の考え方です。

 

しかし、私達の「転職学」研究が明らかにしたのは、転職のリアルな姿はそうした「マッチング」とは異なること、かつ、転職をそのように捉えない方がより良い転職ができそうだ、ということです。

どういうことでしょうか。

 

「今の会社を辞めたい」と思って、いざ転職活動を始めると、想定していなかった厳しい現実に多くの人が直面します。

例えば、自分が応募できそうな企業やピンと来る求人がなかったり、市場で求められている資格やスキルが自分にはなかったり、もらえそうな年収が思ったより低かったり……。

そういった労働力としての現実的な自分の価値を思い知ることもあります。

 

また、転職の選考プロセスの難しさに直面することもあります。

具体的には、必要な書類が思い通りに書けない、面接で自分の希望や経験をうまく伝えられずに選考に通らない、といった問題です。

また、そもそも誰に相談してよいのか分からない、といった情報収集の困難も待ち構えています。

私達はこれらを「求職時リアリティ・ショック」と呼んでいます。

 

データを見ると、若年層は「選考の難しさ」に直面することが多く、ミドル以降は市場で求められる年齢と自身の年齢とのギャップを感じやすくなることが分かっています。

出所:パーソル総合研究所・中原淳「転職に関する定量調査」
出所:パーソル総合研究所・中原淳「転職に関する定量調査」

この想定以上の「求職時リアリティ・ショック」によって、転職活動自体を諦める人も多くいます。

また、このショックを引きずったままの転職は「転職しなければよかった」という後悔を引き起こす一因ともなります。

私たちの調査では、強いショックを感じたまま転職した人の45.9%が、転職後1年以内にまた次の転職を考えている、というデータも出ています。

 

この時点で、転職活動はすでに「マッチング」とは異なる姿を現しています。

転職というのは、日本人が生涯でせいぜい2回程度しか経験しません。

多くの人は転職プロセスのこうした困難を初めて経験し、乗り越えることが必要になります。

 

こうした困難を伴う転職活動をうまく乗り越えるための鍵となるのは、キャリア研究以外も含む幅広い領域で近年注目を集めている「セルフ・アウェアネス」です。

大事なのはセルフ・アウェアネスを高めること

「セルフ・アウェアネス」は日本語にすれば「自己認識」。

単純に言えば、自分のことを正確によく分かっている、ということです。

私達の実証的な調査から見えてきたことは、転職プロセスを通じてこのセルフ・アウェアネスを高めることが、転職活動の成否を分ける、ということです。

 

セルフ・アウェアネスには2つの側面があります。

「自分自身の内側」を見つめて理解する「内向き」の認識(内面的自己認識)と、「他者から自分がどう見えているのか」を理解する「外向き」の認識(外面的自己認識)です。

 

例えば、自分の希望や実現したいキャリア、強みや弱みなどをきちんと理解していなければ、転職面接も書類作成もままなりません。

かといって、自分のことだけ掘り下げていても、採用する企業側(=他者)から見たときにそれが的外れでは、選考を通りにくくなります。

セルフ・アウェアネスとは、「自分自身のこと」と「他者から見たときの自分の姿」を重ね合わせ、その違いやズレを認識し、調整していくことです。

ただの「自分探し」とは違います。

 

「内面的」と「外面的」という2つの側面を用いて、人の自己認識のタイプをそれぞれの強弱により2×2の4タイプに分けることができます。

私達の研究でも、転職活動においてそうした自己認識をどのように高めることができたか、を測定しました。

 

下に図示しましたが、転職活動においてその2つの自己認識が両方とも高かったのが「高認識」タイプ、内面的自己認識だけが高いのが「我が道を行くタイプ」。

また、外面的自己認識だけが高いのが「世間体重視タイプ」、両方とも低いのが「低認識」タイプです

出所:筆者作成
出所:筆者作成

企業選びの特徴をみると、「我が道を行くタイプ」は、自分の気持ちややりたいこと、キャリア開拓や専門性に強くこだわる傾向が見られます。

外面に偏った「世間体重視タイプ」は、周囲から自分がどう見られているのかを気にして、周りに自慢できる企業や職業を目指しがちです。

 

そして、私たちの調査からは、この4タイプのうち、内面・外面の自己認識がともに高い「高認識タイプ」の転職者が、転職後の満足度が最も高く、転職に成功しているタイプだということが分かりました。

逆に、最も満足のいく転職ができていなかったのが、低認識タイプでした。

出所:パーソル総合研究所・中原淳「転職に関する定量調査」
出所:パーソル総合研究所・中原淳「転職に関する定量調査」

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