おにぎり、弁当、おでん……長期不振のコンビニ主力商品たち。次の「四番打者」は?

おにぎり、弁当、おでん……長期不振のコンビニ主力商品たち。次の「四番打者」は?

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今コンビニに求められているのが、野球で言うところの「四番打者」である。売上を引っ張ってくれる、頼りになる存在だ。これまでは「おにぎり」「米飯弁当」「おでん」がそうだった。しかし、その主力商品が長期の不振に陥っている。「四番」の条件とは何か。歴史をひもときながら、新たな主軸に定着したコンビニコーヒーも含め、商品開発について考えたい。

私たちの暮らしに欠かせないコンビニ。優れた商品や便利なサービスを次々に提供する一方、各チェーンは人件費の高騰、食品廃棄、24時間営業の維持など新たな問題も抱えています。「月刊コンビニ」元編集長の梅澤聡さんが、コンビニが描く新しい未来を、50年の歴史を踏まえて解説します。今回のテーマは「コンビニの次なる主力商品は何か」についてです。

毎日1店舗平均300個近く売れるおにぎり

コンビニのおにぎりは、野球に例えると「四番打者」、つまりチームの主砲である。

どれだけ売れているのか。

セブン-イレブンを例に挙げると、1日1店舗当たり平均280~290個(「数字で見るセブン-イレブン・ジャパン」をもとに計算)で、1日3万円台後半の売上になる。

 

おにぎりほどではないが、おでんも稼ぎ頭だった。

おでんを1個で済ますお客はほとんどいない。

たまご、大根、白滝、牛すじ、がんもなど複数購入する。

5点で500円弱。

仮に1日30人が利用すれば1万5000円前後になる。

おでんはアジア各国の日本型コンビニでも導入され、売上に寄与している。台湾西南部・台南市のコンビニ店頭では、日本以上の仕込み量で販売していた=2019年3月、筆者撮影
おでんはアジア各国の日本型コンビニでも導入され、売上に寄与している。台湾西南部・台南市のコンビニ店頭では、日本以上の仕込み量で販売していた=2019年3月、筆者撮影

セブン-イレブンの店舗平均日販(1店舗当たりの1日の平均売上高)は、コロナ禍の影響を受ける前の2019年度、65万6000円だった。

売場面積比で見ると、おにぎりは非常に効率の良い商品であることが分かる。

おでんも店舗で仕込むため粗利が高く、上手に販売すれば、加盟店オーナーにとって利益が出やすい(半面、廃棄ロスもあるが)。

 

近年、頭角を現したのが「コンビニコーヒー」である。

ラテを含むコンビニコーヒーの販売数は、1日1店舗当たり約140杯(上記「数字で見るセブン-イレブン・ジャパン」をもとに計算)で、毎日およそ1万5000円前後の売上になる。

 

しかし、コロナ禍で異変が生じた。

現在は緊急事態宣言が解除され、首都圏のほとんどの店舗で酒類販売の時間制限も撤廃された。

ただ、国民の多くがマスクを着け、旅行や帰省を控え、一部ではテレワークが定着している。

海外の感染状況を見ても、なお油断できない局面で、2019年のような人々の動きは戻っていない。

 

コンビニの売上は、人の移動が活発になるほど増える。

どこかへ移動する際、その動線上にあるコンビニに立ち寄るためだ。

オフィスに向かう途中、得意先を回る途中、帰省の途中など、多くは何かの目的で移動している「途中」に立ち寄って買い物をする。

 

片手で食べられる「ワンハンドフード」の代表格であるおにぎりも、人々の移動が活発になるほど売上が増える。

それゆえコロナ禍の2020~21年、目に見えて売上を落とした。

ミニストップは集客力を高めるため、2019年7月から約2000の全店舗で、通常のおにぎりを全品100円(税抜き)に統一した。店内加工のおにぎり(画像で「当店炊きあげ」とある商品。中心価格158円)を販売する店舗もある=筆者撮影
ミニストップは集客力を高めるため、2019年7月から約2000の全店舗で、通常のおにぎりを全品100円(税抜き)に統一した。店内加工のおにぎり(画像で「当店炊きあげ」とある商品。中心価格158円)を販売する店舗もある=筆者撮影

片手で食べざるを得ない状況とは、仕事中のオフィスや、駐車場の車内、スポーツ観戦の客席、野外活動、居酒屋で飲んだ帰りの路上など、何かしら理由のあるシーンが多い。

それらがコロナ禍で吹っ飛んでしまった。

おにぎりの品質改善は続くものの、「四番」の地位にあり続けるのは、もはや難しいのかもしれない。

「米飯類」「おでん」の売上、過去20年で大幅減

おでんも苦境にあえいでいる。

感染防止策として、専用のおでん什器(じゅうき)による販売を取りやめた店舗も多く、「おでん=コンビニ」の図式が崩れつつある。

コンビニでは代わりにパック入りおでんを売っているが、同じような商品を格安で売っているスーパーマーケットとの違いを打ち出しづらい。

 

もちろん、従来の什器で販売している店舗もある。

ただし、衛生上の問題から、ビニールカーテンの内側で、しかもフタをしっかり閉めている。

特有の匂いが店内に漂わず、売っていることに気づかないお客も多いのではないか。

おでんは、おいしそうな湯気がたって初めて強みを発揮する。

各チェーンが具材の多様性やつゆの地域性にこだわってきたコンビニのおでん。コロナ禍で売上が急落している=2019年8月、ファミリーマート本部、筆者撮影
各チェーンが具材の多様性やつゆの地域性にこだわってきたコンビニのおでん。コロナ禍で売上が急落している=2019年8月、ファミリーマート本部、筆者撮影

新しい主力商品に定着したコンビニコーヒーは、成長途上にあるものの、オフィスへの出勤が減り、特に都市部の店舗では売上減に見舞われている。

 

そもそもコロナ禍以前から、おにぎりと米飯弁当を合わせた「米飯類」の売上は、この20年で1店舗当たり数十%減っている。

おでんの売上も、20年間にほぼ半減した。

廃棄ロスを嫌っておでんの取り扱いをやめる店舗は、コロナ禍以前から出ていた。

酒販店出身コンビニの主力商品だったビール

「四番打者」といえば、かつてはビールもその1つだった。

初期のコンビニは酒販店からの業態転換が多かった。

酒販免許を持っているので、「酒+コンビニ商品」で優位に立てたためだ。

冷えた缶ビールとつまみ類は、酒販免許を持つコンビニにとって、非常に「おいしい商品」であった。

 

しかし、2003年9月に酒の販売が自由化され、スーパーや免許を持たないコンビニが一斉に販売を始めた。

さらにドラッグストアも安売りに参戦した。

その結果、酒販店出身のコンビニは主砲を失ってしまった。

 

コンビニが獲得したいのは、スーパーやドラッグストアが扱わない、あるいは扱えない「強打者」である。

大手ナショナルブランドメーカーが製造するビールや飲料、菓子、カップ麺、洗剤などには到底務まらない。

 

他業態との差別化のための苦労は、コンビニの草創期にもあった。

1970年代、日本に71万軒あった零細な食料品店は、スーパーの脅威にさらされていた。

雨後のタケノコのように現れる大型の安売り店に対し、狭い店内、少ない人員、少量仕入れの零細店は、なす術もなく廃業に追い込まれていった。

当時スーパーが武器とした「薄利多売」に対抗できなかったのだ。

 

セブン-イレブン(・ジャパン)の実質創業者である鈴木敏文氏は、1974年5月、東京江東区の豊洲に1号店をオープンした。

親会社であったイトーヨーカ堂の信用はあったものの「セブン-イレブン」の信用は薄く、既存の商品をかき集めた品ぞろえからスタートしている。

 

その新業態に鈴木氏が求めたのは、ほしい商品が、ほしい時に、ほしいだけ手に入る店だった。

ほしい商品は本部が用意するものの、それだけではスーパーと差別化できない。

そこで、アメリカのセブン-イレブンと同様に長時間営業を売りにし、欠品を生じさせない店舗運営を徹底した。

「ほしい商品が、ほしい時に、ほしいだけ手に入る」というコンセプトを突き詰めて、コンビニ業態は発展してきた。24時間営業はその軸となるものだ=筆者撮影
「ほしい商品が、ほしい時に、ほしいだけ手に入る」というコンセプトを突き詰めて、コンビニ業態は発展してきた。24時間営業はその軸となるものだ=筆者撮影

当時のスーパーは、安売りの目玉商品をチラシで訴求し、売り切れご免の販売体制だった。

夕方にはほしい商品がなくなるため、安心して買い物できなかった。

一方のコンビニは、決して安くはないものの、いつ来店しても、ほしい商品がほしいだけそろっている売場にこだわったのだ。

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