【1989年9月27日】32年前、ソニーがコロンビア・ピクチャーズ買収を発表

【1989年9月27日】32年前、ソニーがコロンビア・ピクチャーズ買収を発表

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「10年前にこんなことが…」「あのサービスは20年前から?」。ビジネスシーンの会話の“タネ”になるような、過去に社会を賑わせた話題を不定期で紹介します。

32年前の1989年9月27日、ソニーがアメリカの大手映画会社コロンビア・ピクチャーズ社を買収することで基本合意に達した、と発表しました。

コロンビア・ピクチャーズ社の買収で、記者会見するソニーの盛田昭夫会長(当時、中央)。アメリカで反発の声が高まっていることについて「外国人が買った例は過去にもあるのに、日本の企業の時だけ、こうした批判が出たのは非常に残念だ」と述べた=1989年、朝日新聞社
コロンビア・ピクチャーズ社の買収で、記者会見するソニーの盛田昭夫会長(当時、中央)。アメリカで反発の声が高まっていることについて「外国人が買った例は過去にもあるのに、日本の企業の時だけ、こうした批判が出たのは非常に残念だ」と述べた=1989年、朝日新聞社

翌日付の朝日新聞朝刊(東京本社版)によると、買収金額は1株あたり27ドル、総額34億ドル(当時の為替レートで約4800億円)。

日本企業によるアメリカでの企業買収としては史上最高額(当時)となりました。

 

コロンビア社は「アラビアのロレンス」「未知との遭遇」「ランボー」など多くのヒット作を含む2700本の映画のほか、テレビ番組も2万3000本以上所有していました。

上記の記事では、「ソニーは、こうした豊富なフィルム・ライブラリーや今後製作される映画の放映権、ビデオ化権などを手に入れることで、8ミリビデオをはじめとした映像機器普及というハード戦略を進める上で欠かせない、ソフト資産獲得の実現に一歩近づいた、といえる」と報じています。

ソニーがコロンビア・ピクチャーズ社を買収することで両社が合意したことを伝える1989年9月27日付朝日新聞朝刊(東京本社版)の記事
ソニーがコロンビア・ピクチャーズ社を買収することで両社が合意したことを伝える1989年9月27日付朝日新聞朝刊(東京本社版)の記事

映像ソフト資産がなぜそんなに重要だったのでしょうか。

記事内では、1970~80年代に家庭用ビデオレコーダーの規格を争った「第1次ビデオ戦争」に触れています。

ソニー率いるベータ陣営が、日本ビクター(現JVCケンウッド)や松下電器産業(現パナソニック)などでつくるVHS陣営に敗れた原因を「貸しビデオ店の普及に伴い、ベータ方式のビデオソフトの少なさが、シェアの低下へ、それがまたソフト減少につながるという悪循環におちいった」と説明。

ビデオカメラでVHS方式と8ミリ方式のシェア争いが始まる中、ソニーにとってソフト資産の獲得が急務だったと解説しています。

 

一方、アメリカ国内では反発が広がりました。

当時、日本はバブル真っ盛り。

日本車の輸出攻勢で日米貿易摩擦が過熱し、アメリカは日本に対し大きな警戒感を抱いていた頃です。

1989年9月30日付朝日新聞朝刊(東京本社版)では、買収合意の発表の翌日、アメリカ・ロサンゼルスのラジオ局が「日本人は米国を乗っ取るのか」というタイトルでリスナーの声を特集したことや、有力紙が相次いで大きなニュースとして扱ったことを伝えています。

アメリカの地元紙やラジオ局で、日本企業による買収にいらだちや嘆きが広がっていることを報じる1989年9月30日付朝日新聞朝刊(東京本社版)の記事
アメリカの地元紙やラジオ局で、日本企業による買収にいらだちや嘆きが広がっていることを報じる1989年9月30日付朝日新聞朝刊(東京本社版)の記事

ソニー創業者の1人で、当時会長だった盛田昭夫氏はこうした「日本たたき」に反論します。

1989年10月12日付朝日新聞朝刊(東京本社版)によると、前日にあったシンポジウムで、盛田氏は「米国の魂を買ったと非難するならば、売った方にも問題がある」と発言。

これに対し、同席していたアメリカのアマコスト駐日大使が「ソニーのコロンビア社買収は、米国民にとって(刺激的な)問題だったことを意識しなければならない」と応じるなど、ピリピリしたムードが伝わってきます。

半月余り後の10月31日には、三菱地所がニューヨークにあるロックフェラーセンターの管理会社買収を発表し、アメリカの反発はいよいよ高まりました。

 

しかし、後にハリウッド経営の難しさが浮き彫りになります。

1993年ごろからヒット作が出ずに苦戦し、大物経営陣も相次いで退任。

1994年11月18日付朝日新聞朝刊(東京本社版)によると、1994年7~9月期の四半期の連結決算で、コロンビア・ピクチャーズに関して約3150億円の損失を計上しました。

収益見通しが厳しくなり、のれん代(買収先企業の純資産額と、買収額の差額)を一括償却したことが響きました。

映画部門で赤字が続き、四半期決算で3150億円の損失を計上したことを伝える1994年11月18日付朝日新聞朝刊(東京本社版)の記事
映画部門で赤字が続き、四半期決算で3150億円の損失を計上したことを伝える1994年11月18日付朝日新聞朝刊(東京本社版)の記事

コロンビア社買収は失敗と酷評されることもありました。

しかし、この買収を機に参入した映画事業は、後の基幹事業の1つに成長。

2021年4月29日付朝日新聞朝刊(東京本社版)によると、ソニーグループが2021年4月に発表した2021年3月期決算は、純利益が前年の約2倍の1兆1717億円に達し、1946年の創業以来初の1兆円超えを記録しました。

コロナ下での巣ごもり需要で、ゲームや音楽配信、テレビ販売などが好調だったほか、子会社が制作や配給に関わった映画「鬼滅の刃」は日本の映画史上歴代1位の興行収入を記録しました。

1995年からソニー社長を務めた出井伸之氏は、2019年3月10日付朝日新聞朝刊(東京本社版)で、盛田昭夫氏らによるコロンビア社買収を「電機産業だけでは将来だめになると考えた」「先見の明があった」と評価しています。

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