街を歩く視覚障害者をビジネスで支える。SOMPO子会社が支援に乗り出した理由

街を歩く視覚障害者をビジネスで支える。SOMPO子会社が支援に乗り出した理由

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プライムアシスタンスが支援に乗り出した理由とは

視覚障害者にスマホを通じてアドバイスをするプライムアシスタンスのオペレーター=プライムアシスタンス提供
視覚障害者にスマホを通じてアドバイスをするプライムアシスタンスのオペレーター=プライムアシスタンス提供

そもそもプライムアシスタンスが視覚に障害がある人の支援に乗り出したのは、本業のロードアシスタンス事業と関係があります。

 

SOMPOホールディングスの中核企業、損保ジャパンの主力事業は自動車保険。

 

顧客が万が一、事故を起こしたときに相手とのやりとりやロードサービス対応を24時間、365日にわたって適切におこなう必要があります。

 

そのロードアシスタンスの実務はプライムアシスタンスが担っています。

 

全国どこが現場になっても、プライムアシスタンスは顧客に不便を感じさせずに対応できる十分な数のオペレーターを待機させています。将来は人口減でドライバーが減っていくことが予想されるうえ、高齢者や外国人など、ちょっとした相談に電話で応じてほしい人たちはほかにもいるのではないかと考えました。

 

寄り添うことを求めている人たちはどこかにいないだろうか。こんな検討を社内で進めた結果、視覚に障害のある人たちをサポートしていくビジネスをめざすことにしました。

 

視覚障害者の全国団体とも連携し、必要なソフトウェアやアプリの開発を独自に進めました。そして今年7月、実証実験のスタートにこぎ着けました。

 

日本眼科学会によると、視覚に障害がある人は国内に約163万人いるそうです。家の外で活動するにはサポートを必要とする人が多く、家族や「同行援護」などの行政サービスに支えられている人が多い一方、外に出ることをあきらめ、引きこもってしまう人も多いのが実態だといいます。

 

他方、スマホアプリのグーグルマップなど、目が見えなくても使いこなることができ、障害者の自立に役立つサービスも増えてきています。

 

プライムアシスタンスで当初から視覚障害者支援を立案してきた新事業開発室の藤田玲子副長は、「外出の際に自力で安全を確保できることなどが条件にはなりますが、もっと自立したいという意欲がある方を一歩前に進める応援ができるサービスにしていきたいと思います」と話しています。

白杖とスマホを手に、プライムアシスタンスのオペレーターに相談をする障害者の女性=プライムアシスタンス提供
白杖とスマホを手に、プライムアシスタンスのオペレーターに相談をする障害者の女性=プライムアシスタンス提供

ただ、まだ事業化に向けた課題も残っているといいます。

 

高額のサービス料を求めても負担できない利用者が多いと考えられるため、適正な価格設定をどうしていくかが難題です。

 

逆に赤字覚悟の安価だと事業の持続可能性を担保できず、福祉サービスではなく「ビジネス」である理解を得るのに時間がかかるかもしれません。

 

新事業開発室の佐藤伸剛室長は「使ってくれる人たちにしっかりしたサービスを届けることで価値を認めてもらい、口コミで広がってくれればと期待しています」と話しています。

世界に広がるV500ネットワーク 課題解決こそ「商機」


障害があっても分け隔てなく生活でき、健常者とともに歩んでいける社会をめざす「The Valueble500」という活動が、世界中の大企業の賛同を得て進められています。

 

障害者を「福祉」の対象としてだけ考えるのではなく、社会の一員、ビジネスのターゲットとして意識し、世の中の製品やサービスをあまねく活用してもらう取り組みに力を入れていく動きです。

 

障害者がより快適に暮らせるための商品開発やサービスづくりにも力を入れ、堂々と稼いで収益や次の投資、経済成長につなげていくことをめざす発想です。

 

この発想の生みの親は、アメリカの著名な経営学者であるマイケル・ポーター氏。

 

ポーター氏はもともと、1980年代に他社に負けない「競争力」を磨くことが企業にとって最も大切だと主張し、多くの経営者の支持を集めた学者です。

 

ところが最近、ポーター氏は、社会の課題を解決していくことこそがビジネスチャンスを生み、企業も働く人も消費者も、全員が幸せになれる、と訴えるようになりました。

 

たとえば、障害者が生き生きと暮らせることに貢献し、稼げる道筋を探りなさい、というメッセージです。

 

CSV(Creating Shared Value、共有価値の創造)という考えで、企業がもつヒト・モノ・カネといった資産を社会課題の解決に向けることで、さらなる経済的価値と社会的価値を生み出していこうというV500にもつながる発想です。

 

ポーター氏の主張は広く受け入れられ、すでに多くの企業が自分の価値や資産を再検証し、CSVを経営計画の柱に据えています。

 

上場企業であれば、多くの機関投資家も出資先のCSVの取り組み度合いを重視しています。

 

V500には世界中の400を超える企業が参画し、日本からはSOMPOホールディングスやNEC、ソニー、ソフトバンクなど39社が加わっています。

 

AI(人工知能)や環境技術がどんどん身近になってデジタル社会が日々、進化を続けている一方、さまざまな価値観や生き方を認め合うダイバーシティー(多様性)についての意識も高まってきました。

 

こうしたなかで、性別や国籍、資産や障害の有無などを問わず、どんな属性であろうと個人の価値観や発想が大切にされ、企業の成長と個人の幸せを両立していく姿勢が問われるようになってきました。

 

特に、企業にとっては、その企業が追求していく価値を社会から求められている価値と一致させていくことが大切になっています。

プライムアシスタンスの挑戦「SDGsとも共鳴」

「だれひとり取り残さない」ことを目標に掲げる国連の持続可能な開発目標(SDGs)とも共鳴しています。

 

SDGsについて研究している慶応義塾大大学院政策・メディア研究科の高木超(こすも)特任助教(35)は、「男性や女性、子ども、お年寄りと同じ枠組みで、障害者を社会を構成する大切な『主体』と位置づけていく姿勢が必要です」と訴えます。

 

どんな人も取り残さない目標を共有し、企業も「公共」に積極的にかかわっていく。そしてしっかりもうけて商品やサービスが持続可能なものになるよう知恵をしぼっていく。こんな発想の転換が求められているのかもしれません。

 

「障害者の側も、脆弱(ぜいじゃく)な存在で、社会から支えてもらっている存在と考える発想を乗り越え、挑戦していくことが必要です。その意味で、目に障害がある人の支えとなるビジネスに挑戦し始めたプライムアシスタンスの取り組みは注目に値すると思います」

 

高木さんはそう話しています。

 

 

 

(朝日新聞社はV500に関する特設ページを公開しました)

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