アメリカ軍が撤退したアフガン、世界の「駆け引き」の主戦場に 日本への影響は?【前編】

アメリカ軍が撤退したアフガン、世界の「駆け引き」の主戦場に 日本への影響は?【前編】

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いま海外で起きていること、世界で話題になっていること。ビジネスパーソンとして知っておいた方がいいけれど、なかなか毎日ウォッチすることは難しい……。そんな世界のニュースを、コメディアンやコメンテーターなどマルチに活躍しているパトリック・ハーラン(パックン)さんと、元外交官の中川浩一さん(現・三菱総合研究所主席研究員)が、「これだけは知っておこう」と厳選して対談形式でわかりやすくお伝えします。

中川 パックン、きょうは8月に起きた「世界のニュース」、そのドラマの続きを見ていきたいと思います。

20年続いたテロとの闘い、アメリカの「史上最長の戦争」

パックン(右)と中川浩一さん(※実際の対談はオンラインで実施しました)
パックン(右)と中川浩一さん(※実際の対談はオンラインで実施しました)

中川 8月は、アフガニスタンからのアメリカ軍撤退が世界を揺るがす最大のニュースでした。

アメリカの「テロとの闘い」は、2001年9月11日の、アメリカ同時多発テロに始まり、2003年のイラク戦争を経て、20年にわたり続いてきました。

今回のアフガニスタンからのアメリカ軍の撤退で、「対テロ戦争」が終わるわけではなく、今後は、アメリカ軍が駐留を続けるイラクに主戦場が移っていくのではないかと思います。

アフガニスタンから脱出しようと米軍機にしがみつき、離陸後に上空から落下して死亡した少年の写真を掲げる女性ら=8月21日、ロンドン市内、朝日新聞社
アフガニスタンから脱出しようと米軍機にしがみつき、離陸後に上空から落下して死亡した少年の写真を掲げる女性ら=8月21日、ロンドン市内、朝日新聞社

今回の撤退にはあたっては、カブール空港での(離陸するアメリカ軍機にしがみついたアフガニスタン人が振り落とされて死亡した)映像に見られるように、大きな混乱を招き、バイデン政権は窮地に陥っているのではないでしょうか。パックンはどう見ていますか。アメリカ人にとって、アフガニスタンってどのような国ですか。

パックン アメリカは、アフガニスタンとは20年も戦ってきたわけで、アメリカにとって「史上最長の戦争」といわれます。

アメリカの国防総省で会見し、20年間に及ぶアフガニスタン戦争の終結を宣言したアメリカ軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長=9月1日、アメリカ・バージニア州アーリントン、朝日新聞社
アメリカの国防総省で会見し、20年間に及ぶアフガニスタン戦争の終結を宣言したアメリカ軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長=9月1日、アメリカ・バージニア州アーリントン、朝日新聞社

そもそもは9.11事件の首謀者であるアルカイダをかくまうタリバンを取り締まるために、当時、アフガニスタンを支配していたタリバン政権を打倒したのですが、打倒後も撤退せず、アフガニスタンに民主主義政権を立ち上げて、二度とアメリカに対するテロ攻撃をアフガニスタンからできないようにしようと考えました。

せっかくだから、アフガニスタンの女性が、教育の機会も得られて、経済活動もできるようにしてあげようとも考えました。

結果的に、アフガニスタンに政府を立ち上げることはできましたが、アメリカ軍を撤退することはできてこなかったんです。

2004年からタリバンが勢力を増して反撃をし始めると、アメリカも兵士の数を増やそうと、最大で約10万人の兵士を派兵しました。

それでもタリバンを完全に抑え込むことはできなかったんです。

アフガニスタン全土の統治はできたんですが、それでもアメリカの国務省は国土の3分の1はタリバンが支配していると報告しています。

ですから、何人増やしても、何年頑張っても、全土を抑えることはできないんです。

 

「まともに機能しない政府」への支援、限界に

アフガニスタンの首都カブールの公園で野宿する国内避難民の子どもら=8月10日、朝日新聞社
アフガニスタンの首都カブールの公園で野宿する国内避難民の子どもら=8月10日、朝日新聞社

パックン アメリカが、アフガニスタンが立ち上がるまで残って、アフガニスタンがstand upするときに、アメリカがstand downする、撤退するのが理想だったんですが、アフガニスタンはstand upしなかった。

アメリカが協力してつくりあげた政権は、かなり深いところまで腐敗し、アフガニスタン軍に支援金を出しても末端の兵士の給料に回らず、横領されていました。

結局、軍の士気も高まらない、国民の政府に対する支持率も高くならない。ずっと低いままです。

前回の選挙で、アフガン国民4000万人の中で、投票したのは200万人弱。総人口の5%足らずです。

一般人からの支持も得られていない。軍人も戦う気がない。そんな国を永遠に一方的に支えることができるかと言ったら、それはできません。ほとんどのアメリカ人もあきらめています。

残念ながら、アメリカは20年かけて頑張っても、アフガニスタンという一つの国を育てることができませんでした。

タリバンとの関係でも反省点はあるでしょう。でも、どう頑張っても政府としてまともに機能しないアフガニスタンに永遠にアメリカの富(すべて入れると6兆米ドルに上るとの計算もある)と気力と命をかけてもしようがない。たぶん、ほとんどのアメリカ人はいま、こう思っています。

東京パラリンピックに出場し、男子走り幅跳び(上肢障害T47)で跳躍するアフガニスタンのホサイン・ラスーリ選手。タリバンが仕掛けた地雷で左腕を失った=8月31日、国立競技場、朝日新聞社
東京パラリンピックに出場し、男子走り幅跳び(上肢障害T47)で跳躍するアフガニスタンのホサイン・ラスーリ選手。タリバンが仕掛けた地雷で左腕を失った=8月31日、国立競技場、朝日新聞社

パックン 私、計算したんですけど、6兆ドルあれば、東京オリンピックを200回開けるんです。

20年かけて無意味な戦争をするか、月1回ぐらいのペースでオリンピックを開催するかという選択です。まあ、そんな頻度でオリンピックやってもありがたみはないですが。

アメリカの兵士も約2500人が命を落としています。アフガニスタン軍、警察、一般の方も命を落としています。アメリカの本土への攻撃はなくなりましたが、それ以外のアメリカの国益はアフガニスタンにはほとんど見当たらないんです。

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