FIREしたら働かない? 好きなことを追求して、自分にも社会にもプラスに

FIREしたら働かない? 好きなことを追求して、自分にも社会にもプラスに

ライフ・マネー

三菱系の大手企業に勤めながら徹底した倹約と資産運用を続け、30歳でFIRE(Financial Independence, Retire Early=経済的自立と早期退職)を実現した穂高唯希さん。FIREという生き方の魅力やFIREがいま注目される理由、FIREと従来の早期退職の違い、FIREの目指し方などについて、実体験を元にお伝えします。

FIREの本質は「経済的自由を得て、人生の選択肢を増やす」

こんにちは、穂高 唯希です。

本コラム第1回では自己紹介や経済的自由について少し触れました。

今回は「FIRE」とは何なのか、複数の角度から深堀りしてみたいと思います。

経済的自由を得れば人生の選択肢や自由度が増す、と筆者は言う=筆者提供
経済的自由を得れば人生の選択肢や自由度が増す、と筆者は言う=筆者提供

そもそも「FIRE」という言葉を知らない方もいらっしゃると思います。

私がこの言葉に出会ったのは2018年でした。

 

ブログの読者の方に「あなたと同じことをやっている人がアメリカにいる」とウォールストリート・ジャーナルの記事を教えてもらったことがきっかけでした。

記事に書かれたアメリカの方は、給与の7割を米国株に投じ続け、経済的自由をめざしていました。

つまり、私がやり続けてきたことと酷似していたことになります。

そして、その行動はアメリカではFIREと呼ばれていると知ったのです。

トレーダーらが激しく行き交うニューヨーク証券取引所。アメリカの多くの企業が上場し、世界経済を牽引(けんいん)してきた=1989年、ニューヨーク市、朝日新聞社
トレーダーらが激しく行き交うニューヨーク証券取引所。アメリカの多くの企業が上場し、世界経済を牽引(けんいん)してきた=1989年、ニューヨーク市、朝日新聞社

特定の事象が多くの人々に広がる際にはきっかけがあります。

2つ挙げてみましょう。

1つは象徴的な人物がロールモデルとなったとき。

もう1つはキャッチーでわかりやすい言葉に置き換わったときです。

 

それまで私はセミリタイアという言葉を使っていましたが、そこから初めてFIREという言葉をブログで扱い、発信しました。

そしてFIRE達成までの軌跡をそれまでと同様に示し続け、達成することで、「こういう選択肢もある」と伝えようとしました。

 

さて、FIREとは「Financial Independence, Retire Early」の頭文字をとった略称です。

私なりにその本質的な意味をひと言で言い表すと「経済的自由を得て、人生の選択肢を増やす」ことを意味します。

アメリカでは20~30代の若者の間でムーブメントとなっているとされ、私の知る限りドイツやオーストラリアでも同様の傾向がみられます。

FIREムーブメントはアメリカや日本だけでなく、先進国の一部で共通してみられる現象という=筆者提供
FIREムーブメントはアメリカや日本だけでなく、先進国の一部で共通してみられる現象という=筆者提供

「Financial Independence, Retire Early」をそのまま和訳すると「経済的自由を得て、早期退職」となります。

早期退職という言葉に違和感を覚える方も多いのではないでしょうか。

「経済的自由を得たら仕事をしないの?」と。

 

そもそも仕事の定義をはっきりさせないと、早期退職の定義もおぼつきません。

例えば、あることが好きでそれが仕事になっている場合、当人にとっては趣味の延長線上に過ぎず、仕事ととらえていないことも大いにあります。

それは「仕事?」「趣味?」「労働?」「働いてる?」はたまた「早期退職?」、どれに当てはまるのでしょう。

「早期退職」がいかに曖昧模糊(あいまいもこ)とした言葉か、イメージしていただけたのではないでしょうか。

 

その実、FIREとは直線的に「単なる早期退職」を意味する概念ではないと言えます。

経済的に自立すれば、時間的・精神的な自由を得て、自分がやりたいことを追求したり、理想とする生き方を実現したりしやすくなります。

全従業員を対象に早期退職者の募集が行われた富士通長野工場。「早期退職」という言葉はこれまで、リストラの文脈で使われることも多かった=2002年、長野市、朝日新聞社
全従業員を対象に早期退職者の募集が行われた富士通長野工場。「早期退職」という言葉はこれまで、リストラの文脈で使われることも多かった=2002年、長野市、朝日新聞社

つまり、自分のやりたいことが世間でいう「仕事」の一種であれば、早期退職とは限りません。

自分のやりたいことが「地域社会や日本のためになること」であれば、やはり早期退職とは限りません。

つまり、FIREの本質はRetire EarlyではなくFinancial Independence(経済的自由の達成)のほうにあると言えるでしょう。

 

世界的な広がり 背景に支配的価値観への懐疑

FIREという言葉がアメリカから日本に入ってくる前、日本語で最も近い言葉は「セミリタイア」でした。

「セミリタイア」とは、適度に働きつつ、自分がやりたいことを追求したり、余暇や家族と過ごす時間をしっかり確保したりするライフスタイルとされてきました。

 

では、アメリカだけでなく日本やドイツなどの先進国で広がる「FIRE」という概念と、従来的な「セミリタイア」という概念。

両者はどう異なるでしょうか。

筆者によると、「従来的なセミリタイア」と「FIRE」の間には本質的に異なる部分がある=筆者提供
筆者によると、「従来的なセミリタイア」と「FIRE」の間には本質的に異なる部分がある=筆者提供

まず考えられるのが、実現年齢と時代背景です。

従来のセミリタイアは40~50代で早期退職することが主流でした。

そして、あくまで文字通り「退職時期を早める」ことに主眼が置かれていた印象です。

 

それに対して昨今のFIREは、20~30代など若いうちに「サラリーマンなど従来的な働き方や、金銭や物質を絶対視する価値観とは別の道を選び、より主体的で幸福度の高いライフスタイルをめざす」というものです。

先ほど述べたように、「退職するか、しないか」「働くか、働かないか」という表層的な論点ではなく、あくまで「精神的な豊かさの追求」「物質主義への懐疑」といった、現代ならではの要素が背景にあると考えています。

つまり、「FIRE」とは「働かない」ことを直線的に意味しないのです。

 

みなさんは「働く」って何なのか、考えたことはあるでしょうか。

日本国民の3大義務の一つ?

お金を得るためのもの?

どれも部分的に当たっているでしょう。

なぜなら、「働く」という言葉は非常に広い概念だからです。

筆者にとって興味ある活動の一つである農業。稲作・畑作に加え果樹栽培も体験した。この地域では農家の高齢化が進み、若い力が足りない=筆者提供
筆者にとって興味ある活動の一つである農業。稲作・畑作に加え果樹栽培も体験した。この地域では農家の高齢化が進み、若い力が足りない=筆者提供

例えば、私にとってこのコラムを執筆することは、「働く」というよりも「興味ある活動に従事している」という感覚です。

執筆の対価として金銭の授受は生じますが、働いている感覚はありません。

私にとってのブログ、農業、書籍執筆なども同様です。

人生における有限の時間を「興味ある活動」または「社会性のある活動」に充てている、という表現が正確でしょうか。

 

このように、「働く」という行為を突き詰めると、現代でこそ「働く=サラリーマン」という図式が暗黙のうちに成立し、“常識”であり、“社会で一般的と広く認められる概念”であり続けた、ということに気づきます。

つまりFIREのRE(Retire Early)の解釈として、「経済的自由を達成することで、旧来支配的であった働き方からRetireし、好きなことや興味ある活動を仕事にする選択肢を持てる」ことに、FIREの本質的な部分を見いだせます。

神戸・元町居留地のランチタイムに「元ブラ」するスーツ姿のサラリーマンたち。サラリーマンの誕生は1920年代とされ、「知識階級」と呼ばれることもあった=1940年、神戸市、朝日新聞社
神戸・元町居留地のランチタイムに「元ブラ」するスーツ姿のサラリーマンたち。サラリーマンの誕生は1920年代とされ、「知識階級」と呼ばれることもあった=1940年、神戸市、朝日新聞社

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