五輪3度出場の筆者が教える「大舞台の前の緊張のほぐし方」3選

五輪3度出場の筆者が教える「大舞台の前の緊張のほぐし方」3選

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スピードスケート・ショートトラックで3度の冬季五輪に出場した勅使川原(てしがわら)郁恵さん。日本代表選手を長年務めることができた背景にあるセルフマネジメントの手法は、多くのビジネスパーソンにとって応用が利くといいます。その実践法をお伝えします。

手は震え、頭は真っ白……過度の緊張を避けるには

日々熱戦が繰り広げられた東京オリンピック・パラリンピックが終わりました。

新型コロナウイルスへの対応や、開催への批判もある難しい環境の中、選手たちはプレッシャーや緊張を感じながら戦っていたと思います。

それでも競技に集中する姿に、心の強さを感じました。

 

私も世界一を目指し、3度のオリンピックを始め、ワールドカップや全日本選手権など、いくつもの大舞台を経験してきました。

中でもオリンピックは世界中の注目を集める別格の大会で、緊張のレベルも段違いでした。

自身初のオリンピックとなる長野五輪で、スピードスケートショートトラック女子1000メートルに出場した筆者=1998年、朝日新聞社
自身初のオリンピックとなる長野五輪で、スピードスケートショートトラック女子1000メートルに出場した筆者=1998年、朝日新聞社

その緊張も、適度であれば集中力を生み、良い結果につなげられます。

しかし、過度な緊張は身体的・心理的な悪影響をもたらします。

頭が真っ白になったり、汗をかいて手が震えたりするのです。

 

読者のみなさんも、新しい職場でのあいさつや取引先でのプレゼンなど、仕事を通じて緊張する場面があるかと思います。

今回は、私が現役時代から実践している「大舞台の前の緊張のほぐし方」についてお伝えします。

ポイントは精神面、身体面、食事面の3つです。

イメージトレーニングと深呼吸の侮れない効果

1つ目の精神面では、気持ちを落ち着かせリラックスすることが大切です。

私の場合、イメージトレーニングと深呼吸で心を整えていました。

イメージトレーニングには、体を動かしている理想の自分を思い描くことによって、技術や戦術を向上させる効果があります。

イメージトレーニングは横になって取り組む。現役時代はベッドの上で仰向けになって行っていた
イメージトレーニングは横になって取り組む。現役時代はベッドの上で仰向けになって行っていた

私は現役時代、試合の前夜の寝る前にイメージトレーニングをするようにしていました。

例えば、試合でスタートからゴールまで良い流れで優勝する一連のイメージを何パターンか考え、最後に表彰台に上がるまでを思い描いていました。

そうすることで不思議と自信が湧いてくるのです。

自信がつくことで、本番当日も緊張して焦ったり不安になったりすることなく、最高のパフォーマンスを出せました。

 

また、本番前にはスケートリンクの入口などで必ず深呼吸をし、気持ちを落ち着かせてから中に入るようにしていました。

深呼吸にはメリットがたくさんあります。

心身がリラックスし、体に変な力が入らず、集中力も高められます。

このため、今でも仕事の場面などで取り入れるようにしています。

 

深呼吸は健康面にも良い効果があります。

例えば自律神経を整える、血液の循環を促す、ストレス解消、便秘改善、冷え性改善といったものです。

ヨガ・ピラティスで深呼吸をする筆者。試合前もこのような深い呼吸をしていた
ヨガ・ピラティスで深呼吸をする筆者。試合前もこのような深い呼吸をしていた

難しいのが国際大会に出場する時です。

普段の生活とは異なり、異国での暮らしで時差もあり、精神的にかなり厳しくなります。

 

そんな時は、空いた時間に海外選手を誘って一緒に食事をしたり、何気ない会話をしたりと、積極的にコミュニケーションを取っていました。

ただ試合をしているだけでは分からない海外選手の性格や考えに触れ、安心感が増します。

試合当日は相手に対する緊張がほぐれ、シンプルに勝負に集中できました。

 

また、初めて行く試合会場の場合、会場の隅々まで見て回るように心がけていました。

観客席の最上段まで足を運び、客観的に自分がどう見えるかを確認するのです。

そうすることで、会場が特別な場所ではなく、普段の練習場のように感じられ、緊張をほぐすことができました。

 

このように常に平常心でいられるよう行動し、本番に向けた良いイメージを持つことができれば、心が整い、緊張もほぐれてきます。

ストレッチで筋温を上げよう

2つ目の身体面では、筋肉をほぐすことが重要です。

緊張すると、体が硬直してしまいます。

そのため日ごろからストレッチをして筋肉をほぐすことをお勧めしています。

 

ストレッチをすると、体の柔軟性が高まり、血流が良くなって筋温(筋肉の温度)が上がります。

気持ちをリラックスさせ、緊張を和らげることにつながります。

講演する筆者。この日も登壇前にストレッチをした
講演する筆者。この日も登壇前にストレッチをした

私は引退した今でも、大勢の前でお話をする際は、緊張を和らげるために首、手首、腰、足首を回し、最後にアキレス腱(けん)を伸ばしてから人前に出るようにしています。

筋肉がほぐれることで、伝えたい内容をスムーズに伝えることができ、何より自分自身もその場を楽しむことができます。

結果的に場の雰囲気も和み、聞いてくださる方々にも喜んでいただけます。

セロトニンを増やすための食事とは

3つ目の食事面では、必要な栄養素をしっかりとることが大切です。

食べたもので体が作られることはみなさんご存知だと思いますが、精神面にも影響を及ぼします。

 

緊張するとアドレナリンやノルアドレナリンの分泌が増えることが分かっています。

逆に緊張しにくい人はセロトニンが活発に作用しています。

セロトニンが体内で作られるためには、主に3種類の栄養成分(トリプトファン、炭水化物、ビタミンB6)が必要です。

それらを積極的に食事で補い、脳内にセロトニンを増やすことで、緊張も自分なりにコントロールしやすくなります。

試合前の朝食としてよく食べていた献立。セロトニンの分泌を促そうと、米、味噌汁、納豆、サケを取り入れた
試合前の朝食としてよく食べていた献立。セロトニンの分泌を促そうと、米、味噌汁、納豆、サケを取り入れた

私は現役時代、試合当日の朝ごはんに炭水化物であるおにぎり、トリプトファンが多い納豆やお味噌汁、ビタミンB6が豊富なサケなど食べていました。

また、炭水化物やビタミン類がバランスよく含まれるバナナを試合会場に持ち込み、試合の合間に食べるようにしていました。

 

今回ご紹介した3つのポイントは、緊張のほぐし方以外にも、健康的な体づくりのためにも重要です。

ぜひ実践してみて下さい。

 

(このコラムは今回で終わります。)

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