ゆとり世代は「コスパ」、Z世代は「タムパ」 若者の「価値観」は進化する!

ゆとり世代は「コスパ」、Z世代は「タムパ」 若者の「価値観」は進化する!

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若い世代の「価値観」は新たな環境の変化でどんどん進化を繰り返すといわれます。「おひとりさま」や「草食系男子」「年の差婚」などの言葉を世に広めたマーケティングライターの牛窪恵さんが、「さとり世代」や「Z世代」の考え方、ものの見方について読み解きます。

みなさん、こんにちは。

マーケティングライターで、世代・トレンド評論家の牛窪恵(うしくぼ・めぐみ)です。

テレビ番組にコメンテーターとして出演したり、大学院で「Consumer Behavior(消費者行動論)」の授業を担当したりしていますが、本業は、マーケティング会社(インフィニティ)の経営です。

20年以上、おもにターゲット男女の“世代”に焦点を当てて、企業の方々と商品・サービス開発を行なってきました。

立教大学大学院で教壇に立つ牛窪恵さん=筆者提供
立教大学大学院で教壇に立つ牛窪恵さん=筆者提供

 

著書を通じて「草食系男子」の言葉や概念を世に広めたのが、2008年秋。その2年前(2006年)から、複数の企業と一緒に、定量調査やインタビュー調査を通じ、15年にわたって“若者”の研究を続けてきました。

 

そしていま、コロナ禍になって改めて痛感するのは、「世の中は、やっぱり“若者”の価値観に近づいていくんだな」ということ。そして、彼らが近年、驚くべきスピードで“進化”していることです。


bizble読者の中心層は、20~30代の男女だと聞いていますので、皆さんも、「あるある」「そうそう」、あるいは「自分とは違うけど、周りにはいるな」など、ご自身や周りの先輩・後輩などと重ねながら、読んでいただければ嬉しいです。

 

進化の「指標」は「コスパ」と「タムパ」


今回は近年、若者の“進化の指標”として取り上げられる「コスパとタムパ」についてお話しします。

図1 Z世代と「ゆとり世代」、「草食系世代」の違いは=筆者作成
図1 Z世代と「ゆとり世代」、「草食系世代」の違いは=筆者作成


まずコスパですが、「コスト・パフォーマンス(費用対効果)」の略であることは、多くの方がご存知ですよね。【図1】にある通り、おもに「ゆとり世代」(現27~33歳)が10年ほど前から、盛んに口にし始めた概念です。

一方のタムパは「タイム・パフォーマンス(時間対効果)」の略で、ゆとり世代の一つ下の「Z世代」(現17~26歳)へのインタビューで、2~3年前からよく登場するようになりました。

 

そもそも私が15年前、なぜ若者研究に着手したのか。契機は、あるアルコールメーカーと自動車メーカーから、ほぼ同時に次のような悩みを聞かされたことでした。


「牛窪さん、なぜいまの若者はお酒を飲みたがらないんでしょう?」

「若い男性がクルマを欲しがらない理由を、調べてください」

その後2年間かけて、当時20代半ば前後の男性100人に行ったインタビューから見えたのは、彼らの多くが、その上の世代(現40代以上)と大きく違った価値観を持っていたことでした。

 

とくに目立って登場したキーワードは、「失敗したくない」や「人に迷惑をかけたくない」といった言葉でした。

アルコールや自動車も、単なる節約志向だけでなく、「酔って周りに迷惑をかけるかも」や「万が一、(運転で)人を傷つけてしまったら」との思いが、見え隠れしていました。

その他の恋愛や家族関係、働き方に関するインタビューでも、総じて「攻めより守り」と取れるコメントが続出しました。だからこそ2008年、私は彼らを「攻めを重視する『肉食系』(おもにバブル世代以上)ではなく、守りに敏感な『草食系』」と命名したのです。

 

「さとり」世代は中長期的「コスパ」を意識

なぜこのころから、若者(現39歳以下)の価値観が急変したのでしょうか。

私はかつて、その理由を、経済や社会環境、あるいは教育の影響が大きいと考えていました。

バブル経済が崩壊(1990年代半ば)したあとに生まれ、相次ぐ自然災害やテロの脅威を体感するとともに、地球環境への配慮や社会貢献(ボランティア)に関する教育を受けて育った彼ら。

だからこそ、誰かを押しのけて「自分だけ豊かになろう」ではなく、「みんなで幸せになろう」と考えるようになった……との理論です。

ですがその後、若者の進化は「デジタルメディア」と深く関わりがあることに気づきました。

 

気づきをくれたのが、「ゆとり世代」、またの名を、世の中を悟りきった「さとり世代」と呼ばれる男女(現27~33歳)です。

その上の草食系世代が「節約」を盛んに口にしたのに対し、彼らゆとり世代は10年ほど前から、「コスパ」という言葉を多用しました。たとえば、次の通りです。

「このメーカーのヘッドホンは、一見すると安いけど、実は故障しやすいから『コスパ』でいえば高くつく」

「ブランドAのジャケットは、ブランドBより高いけど、飽きて『メルカリ』で売るときに値崩れしないから、コスパで言えばおトク」

 

ここから見えるのは、草食系世代よりゆとり世代のほうが、「いま安いか高いか」だけでなく「中長期的に見て、得か損か」を考えているということです。

その一因と考えられるのが、「草食系世代=『価格.com』(カカクコム)など“比較サイト”に慣れた世代」ですが、「ゆとり世代=『メルカリ』など“フリマアプリ”に慣れた世代」の違いです。

 

比較サイトの多くは、「いま」の価格を一覧にして、現時点でどのサイトで買うのが安いかを表示します。一方のフリマアプリでは、1年前に商品Cを買った人たちが、いまどの程度の価格でその(中古の)商品を出品しているか、またどの程度の値付けをすればCが売れていくのかが分かります。


つまり、「いま」だけでなく「以前」の商品が、「その後」いくらぐらいで売れるのかが中長期的に分かるのが、フリマアプリの特徴です。

だからこそ、現時点のコストだけでなく、「その後」のパフォーマンス(効果)を意識する概念が根強くなった……もちろんコスパが根付いた背景には、別の側面もありますが、そちらは次回以降で詳しくお話ししますね。

 

「Z」世代は手足のように「LINE」「SNS」を扱う

では、その下の「Z世代」はどうか。ゆとり世代とZ世代は、いずれも「デジタルネイティブ」と評されますが、微妙な違いがあります。

ゆとり世代の一番上(1988年生まれ)が10歳を迎えたころ(1998年)、社会にはすでに「ウィンドウズ98」や、子ども向けの携帯電話などが普及しはじめていました。つまり、幼少期からインターネットやケータイに囲まれて育ったのが、ゆとり世代です。

対する「Z世代」は、「スマホネイティブ」や「SNSネイティブ」と呼ばれます。

一番下(2004年生まれ)の男女に至っては、4歳のとき(2008年)、すでに「iPhone 3G」(ソフトバンク)に触っていた可能性があります。青春時代には、LINEやSNSを手足のように操っていました。

最近では、YouTubeやTikTokなど、“動画”との親和性が高い世代とされています。

コロナ禍の合格発表。スマートフォンで受験した県立高校の合否を確認する確認する中学生=2021年3月、茨城県水戸市、朝日新聞社
コロナ禍の合格発表。スマートフォンで受験した県立高校の合否を確認する確認する中学生=2021年3月、茨城県水戸市、朝日新聞社

先の通り、Z世代は現17~26歳です。彼らが「就活(就職活動)」の中心になり始めた3年ほど前から、企業において「業務マニュアルを動画にする」といった取り組みが盛んになりました。また、大学の授業でも「間に動画を10分程度挟まないと、学生の集中力が持続しない」などと言われるようになりました。

 

必ずしも「Z世代がせっかちだから」ではありません。ただ、現40、50代の青春時代とは比べものにならないほど、動画を含めた膨大な情報のシャワーを、Z世代は10年ほど前からずっと浴び続けてきました。

 

世界を飛び交う情報量は10年で60倍に!

図2 出典:総務省「情報通信白書・平成26年版」及びIDC’s Global DataSphere Forecast Shows Continued Steady Growth in the Creation and Consumption of Data
図2 出典:総務省「情報通信白書・平成26年版」及びIDC’s Global DataSphere Forecast Shows Continued Steady Growth in the Creation and Consumption of Data

総務省の報告(2014年 情報通信白書)によると、世界中で生み出されたデジタルの情報量が988エクサバイトとされたのが、2010年。

これが、IDC (International Data Corporation )の発表では、2020年に5万9000エクサバイトに急伸したと見られ、単純計算でいえばこの10年間で、世界のデジタル情報量が約60倍にも増えたことになります【図2】。

Z世代はまさに、その過程で青春時代を過ごしてきました。情報の取捨選択は、たとえ数秒であっても「時間」を要しますから、「時はカネなり」が身につくのも自然なことでしょう。

 

また「Amazonプライム」のように、毎月一定額を支払うことで、商品がよりスピーディに配送されるといったサービス(サブスクリプション)も、ここ数年で続々と登場しています。すなわち貴重な時間も、いまやお金で買うことが一般的になりました。


ゆえに、コスパだけでなく「タムパ=タイム・パフォーマンス」を強く意識するのが、Z世代の特徴でもあるのです。

もっとも、これだけ価値観が多様化した現代において、一人ひとりの男女を「世代」で一つにカテゴライズするのはナンセンスだ、との考え方もあります。

ですが「マーケティングの父」と呼ばれる、かのフィリップ・コトラーも、最新刊「Marketing 5.0(マーケティング5.0):Technology for Humanity」(Wiley)において、顧客ターゲットを草食系~Z世代を含めた5つの世代に分類し、「何歳ごろからインターネットに触れてきたかという点で、彼らの価値観やアプローチ手法は大きく異なる」としています。

 

実はZ世代の「タムパ」志向は、働き方とも大きく関係しています。次回はその点も含めて詳しくお伝えしたいと思います。

 

(このコラムは隔月掲載予定です)

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