富は人から奪うもの? それとも創造するもの? #53

富は人から奪うもの? それとも創造するもの? #53

ライフ・マネー

朝日新聞社メディアビジネス局運営の金融メディア「START!」に掲載された人気連載をbizbleでも掲載。経済評論家の加谷珪一さんがお金の教養を伝えます。

何かを達成するために誰かが犠牲になるという考え方は、実はお金の教養と密接に関係しています。

日本では、誰かが得をすると誰かが損をする、あるいは何かを達成するためには、誰かが犠牲になるという価値観はごく一般的なものです。これは個人レベルでも同じで、何かを実現するためには、何かを犠牲にしなければならないと考えている人は多いと思います。

しかし、この価値観は必ずしも普遍的なものとは言えません。経済的に豊かな国の人ほど、全員が得する方法があると考える傾向が顕著ですし、実際、経済活動が活発な国においては、全員が損をしないという解決策を模索しやすくなります。

太古の昔から商売というものは存在していますが、商売が発展して、資本主義を確立できた国はそれほど多くありません。単なる商売と資本主義の最大の違いは、富が有限か無限かという点に集約されます。

単純な商売しか存在せず、資本主義が発達していない地域では、富は有限ですから、人々はその富を奪い合うことになります。強引な手段を使ってでも、他人の富をたくさん奪った人が、お金持ちになれるという図式です。一方、高度に資本主義が発達した世界では、人から富を奪わなくても富を作り出すことができます。付加価値の高い商品やサービスを開発し、それを社会に普及させることができれば、社会全体の富が増え、誰からも富を奪うことなく、お金持ちになることができます。

富は「奪い合うもの」? 「創造するもの」?

この話は「富は奪い合うもの」なのか「創造するもの」なのかと言い換えることもできますが、社会の富に対して基本的にどのような価値観を持つのかによって、人の行動はまるで変わってくるのです。

富は有限で奪い合うものだと考える人は、常に誰かに富を奪われないかとビクビクしており、自分の富を守るため、弱い立場の人を虐げようとする傾向が顕著です。せっかくお金持ちになっても周囲に高圧的にしか振る舞えない人を見かけることがありますが、こうした人は、自分の富が奪われることに恐怖を感じているのです。

一方、富は自身で創造できるものだと考えている人は、それほど大きな富を持っていない段階から、余裕を持った振る舞いができます。チャンスをうまく利用できれば、富は創造できると思っているので、人から奪われる心配をする必要がありませんし、弱い人から奪う必要もありません。

経済的に成功している人のほとんどは、富は創造できるものと考えており、奪い合うものだとは考えていません。逆に言えば、経済的に豊かになりたければ、富の奪い合いという概念を捨てることが重要です。

考え方をちょっと変えるだけで人生は大きく変わる

富は奪い合うものではなく、自身で創造するものだという感覚が身に付いてくると、他人に対してマウンティングをする必要もなくなりますし、他人からマウンティングされたとしても、どうでもよいことに思えてきます。

マウンティングという行為は、同じコミュニティーの中で、自分が上であることを相手に示す行為ですから、ある意味で、富の奪い合いが日常茶飯事となっている狭いムラ社会でこそ通用するといってよいでしょう。

一方、富は創造するものだと思っている人にとっては、今、自分がいるコミュニティーも絶対的なものではなく、必要に応じて別のコミュニティーに移り、そこで経済活動をすればよいと考える傾向が顕著です。この感覚の違いは、自身のキャリアアップや資産形成に絶大な影響を及ぼします。

この話は実は家庭内にも当てはまります。世帯収入が少ないので、いろいろなことを我慢している人は多いと思いますが、何を我慢するのかで夫婦ゲンカになることもあるでしょう。世帯の収入には上限があり、夫婦でその富を奪い合うものだと考えてしまうと、どうしても対立的な発想になってしまいがちです。

しかし、富を創造するという概念を持っていると、これまでとはまったく違った発想が可能となります。夫の財布と妻の財布で足りなければ、夫婦共同で副業を行い、第三の財布を作って収入を増やすという選択肢が出てくるからです。現実に行動に移すのかはともかくとして、お金が足りないので、どちらがどれだけ節約するのかという話に終始している状況と比べれば、かなり選択肢が広がってくるのではないでしょうか。

筆者は実際に起業したことがあるので、実感としてよく分かるのですが、事業のように夢中になる対象があると、他の欲求が抑えられ、消費がかえって抑制されます。ちょっとした副業でよいですから、給料以外の収入源を確保することを目指すだけで、実際の収入アップと消費の抑制を同時に達成できるのです。

ビジネスの構想を練るという作業は、どんなに小さなものであっても、企業の経営戦略立案とまったく同じですから、この経験が会社員してのキャリアにプラスにならないわけがありません。お金も入って一石二鳥ですから、ぜひ富を創造するという概念を身につけ、実践してみてください。

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