衝突続いたガザ。問題の背景は? 世界のニュースを知ってビジネスに生かそう【前編】

衝突続いたガザ。問題の背景は? 世界のニュースを知ってビジネスに生かそう【前編】

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いま海外で起きていること、世界で話題になっていること。ビジネスパーソンとして知っておいた方がいいけれど、なかなか毎日ウォッチすることは難しい……。そんな世界のニュースを、コメディアンやコメンテーターとして活躍しているパトリック・ハーラン(パックン)さんと、元外交官の中川浩一さんが、「これだけは知っておこう」と厳選して対談形式でわかりやすくお伝えします。

ビジネスパーソンこそ、ニュースを会話の切り口にしよう

パックンさん(右)と中川浩一さん
パックンさん(右)と中川浩一さん

中川 パックン、これからよろしくお願いします。ビジネスパーソン、特に20~30代の方は、毎日の仕事、目の前の案件処理に追われ、世界のニュースについては「読まなきゃ」「知らなきゃ」という思いはあってもなかなかできないのが現実かなと思います。

そこで、現在、大学の講師や報道番組のコメンテーターなど幅広く活躍しているパックンと私で、「これだけは知っておこう」、逆に言えば、「いくら忙しくても、これぐらいは世界の動きを知っておかないと恥ずかしいよ」というニュースを厳選して取り上げたいと思います。

中川浩一さん
中川浩一さん

ビジネスの成否って、必ずしもその1つ1つの商談やプロジェクトに関係することさえ知っておけばいいというものではない。取引先とは商談以外の場で、たとえば今は難しいかもしれませんが、懇親の場では「教養」として、自分の奥深さが取引先に伝わると、より商談相手としての信頼が増すのは間違いないと思います。

逆に言うと、「教養」がないと、仮に目の前の案件ではうまくいったとしても、長く付き合うような関係にはなりにくいので、ビジネスも次につながっていかないと思います。そういう「教養」もこのシリーズで話していきたいと思います。

パックン よろしくお願いします。まずは「基礎情報」を知って、それから新聞のニュースを読むとより深く理解できると思います。池上彰さんが以前、情報を入手するときに「ストック・アンド・フロー」という表現を使っておられました。この表現自体は経済の基礎用語ですが、情報についても当てはまります。

パックンさん
パックンさん

すなわち、情報はいつもためて(ストック)、「基礎情報」として学んでとっておく。その上で、流れる(フローの)毎日のニュースを見ていく習慣をつけるのが大事だと。これができるとビジネスパーソンは、「仕事ができる!」「頭いい!」と思われるのではないかと思いますよ!

アメリカに比べて、日本では全体的に、その日のニュースについて議論することはめずらしい。議論の文化が少ないですよね。アメリカ人はすぐ何かを取り上げて議論していきます。スポーツ感覚ですね。

ニュースは現実のドラマです。実際に世界で起きているドラマなんです。テレビドラマより、脚本がないぶん、展開が読めず、おもしろいと思うんです。

ニュースに出てくる登場人物には、継続してニュースを見ていると、多少情は移るでしょうが、「あの人は昔こういうことをやったから、次はこうやるかな?」と思ったら、「やらなかったんか!」みたいな!そういう、ドラマ的なびっくりもあり、おもしろいんです。

ドラマは趣味の世界ですが、「ニュースを見ること」自体は誰も批判しませんよね。相手がニュースを見ているかはわからないけど、自分が見たニュースについて誰かに伝えるのは全く損はないと思うんです。

趣味の世界で「AKB48にハマっている」と言えば、もしかしたら相手によっては嫌われるかもしれない。「いや、私はガンダムが大好きです」とか(笑)。

でも、少なくともビジネスパーソンは、ニュースを毎日見ているとだいたいほめられますね。共通の話題で盛り上がろうとするときにニュースから入るのはありだと思います。無難だと思います。

相手がニュースに関心がないなら、スポーツなどほかの話題に変えればいい。私はこれが「王道」だと思います。最近起きたニュースをビジネスでの会話の切り口にする。日本のビジネスパーソンも是非真似してほしいですね。

最初は、「ビジネス」という目的のためにニュースを見始めても、それを継続的に見ると面白くなりますよ。

イスラエル・パレスチナ問題。衝突の背景を読み解く3つのポイント

中川 まずは、最近、日本でも大きく取り上げられている、イスラエル・パレスチナの衝突の激化について。パレスチナ問題は、1948年のイスラエル建国以来、これまで70年以上も解決されていない、世界でも最も難しい問題の1つと言われています。今回の衝突を受け、世界でも大きく報道されています。

 

武力衝突を続けてきたイスラエルとパレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスなどの武装勢力が21日午前2時(日本時間午前8時)、停戦に入った。11日間にわたる戦闘で多くの市民が犠牲となり、国際社会から停戦を求める声が高まっていた。

 

イスラエルとハマス、停戦に合意 エルサレム問題棚上げ:朝日新聞デジタル

 

私は外務省に入って、まさかのアラビア語の専攻を命じられたんです。そして、エジプトでアラビア語の語学研修を行った後、外交官としての最初の赴任地は、ガザにある対パレスチナ日本政府代表事務所(パレスチナは国ではないので大使館とは呼ばない)でした。1998年です。

語学研修中、ガザの難民キャンプを訪問して、パレスチナ難民の苦難の歴史を直接アラビア語で聞いたんです。それによって、パレスチナ問題の奥深さを知りました。

同じ時、イスラエルのヘブライ大学のサマーコースで「ユダヤ人から見るパレスチナ問題」という講義を受けました。日本ではパレスチナ問題を、イスラエル寄りに見ると炎上する傾向にありますが、パレスチナ問題には、イスラエル、パレスチナ、それぞれの立場があり、どこから見るかがとても大事なんです。

現場も知らないといけない。実際、中東の現場に行って、アラビア語を勉強すればするほど、アラブの新聞には当時はアメリカ、イスラエルの悪口ばかりなので、アメリカ、イスラエルは悪い国と洗脳されてしまう自分がいました。教育は本当に怖いと思いました。日本人にとってもパレスチナ問題を勉強するときに気を付けなければならないところです。

私は、その後、アラファトPLO(パレスチナ解放機構)議長の通訳も務めました。ガザのアラファト議長の事務所には、今回の衝突の発端となった東エルサレムの旧市街にある、黄金のモスクの写真が飾られているんです。

生前のアラファトPLO議長=朝日新聞社
生前のアラファトPLO議長=朝日新聞社

今回、東エルサレムでイスラエル人がパレスチナ人を追い出そうとしたことが発端で衝突が起きたんですが、東エルサレムに対するパレスチナ人の譲れない思いは理解しておく必要があります。

イスラム教徒にとって、エルサレムは、サウジアラビアのメッカ、メディナに次ぐ3番目の聖地。しかしパレスチナ人にとって、もっとも近く大事な場所です。「将来できるパレスチナ国家の首都」との思いがあるからです。これが1つめ。

しかし、そこがイスラエルに占領されているのが現実。日本人には宗教を意識していない人が多いし、土地が奪われると言っても、なかなか分からないと思います。また、パレスチナ問題に対する立場の違いもあります。

イスラエルは、「パレスチナ人はそもそも『難民』ではない」と言います。「アラブの指導者の指示で、自発的に逃げただけだ」「追い出されたわけではない」と。「『難民』ではない」という講義をイスラエルで受けて、やはりこの問題は多角的な視点で見ないとだめだなと思いました。

2つめは、イスラエルとパレスチナの間で交渉がないことです。1993年のオスロ合意は、イスラエルとパレスチナが相互承認し、交渉で問題を解決しようとのいうのが精神ですが、あれから30年近くが経過し、2014年以降は、両者の交渉は全く途絶えているんです。

対話もない中で、もともと双方の間に「憎悪」があるのに、ますます「疎遠」になっていたというのも大きいと思います。

3つめは、国際社会、特にアメリカですね。トランプ前大統領時代に、「オスロ合意に基づく交渉でその扱いを決めるべき」とされていたエルサレムをイスラエルの首都と一方的に認めて、アメリカの大使館をテルアビブからエルサレムに移転させたり、イスラエルとアラブ諸国の国交正常化を加速させて、パレスチナ問題を置き去りにしたり。

アメリカのトランプ前大統領=朝日新聞社
アメリカのトランプ前大統領=朝日新聞社

アラブ諸国からも、「アラブの連帯」とか言われながらパレスチナは見捨てられました。パレスチナ問題の解決なしでも、イスラエルと仲良くするんだという構図になってしまったのです。

今回の東エルサレムを発端とした衝突の激化は、その氷山の一角にすぎないんです。そして、今後バイデン政権が、70年以上も解決できていないイスラエル・パレスチナ問題にどう臨むのか。「プロ集団」と言われるバイデン政権のメンバーは、解決が困難なことが分かっている。だから手をつけたくないんです。

パレスチナ問題を含め、中東からはバイデン政権は身を引きたい。バイデン大統領自身も、「民主主義対専制主義」とか強調して、中国への競争意識をむき出しにし、外交上の重心を中国へシフトさせようとしています。

そのような中、ブリンケン国務長官がイスラエル、パレスチナはじめ中東を訪問しましたが、バイデン政権がもう一度中東に再関与するか、あるいはお茶を濁して手を引くのか、分岐点に来ていると思います。

 

ブリンケン米国務長官は25日、パレスチナ自治政府のアッバス議長とヨルダン川西岸のラマラで会談し、トランプ前政権が廃止したエルサレムの米総領事館を再開する意向を示した。

 

米、エルサレムの総領事館を再開へ トランプ政権が廃止:朝日新聞デジタル

アメリカのブリンケン国務長官=朝日新聞社
アメリカのブリンケン国務長官=朝日新聞社

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