目次
ビジネスパーソンのみなさん、「食べることも仕事」と思ってますか?
――会社設立後、2019年には資金難に陥った時期もあったそうですが、どういう思いで続けて来られたのでしょうか?
「これは絶対に世の中のためになる」と信じていました。アスリートのデータは必ず世の中の人のためになるし、させなきゃいけないんだという、それだけです。
ただ、そのとき僕ほとんど寝ないで仕事をしてたんです。体調がすごく悪かったんです。そういうときってパフォーマンスが出ないんですよね。
――アスリートでコンディショニングの大切さがわかっていても、追い詰められるとうまくできないこともあるんですね
そうなんですよ。でも、それは「ビジネス」という知らない世界に行ったからだったと思います。
僕は、サッカーとビジネスは「別」だと思っちゃってたんですよ。だけど、一緒だったんです。そのときは、しっかり睡眠をとり、行動できるときは行動するようにしました。
だから、アスリートも一般の方も一緒なんですよ。両方経験している僕が言うので、間違いないです。
なので僕は皆さんに伝えたいんです。もっとコンディションを整えたらもっとパフォーマンスを出せますよ、と。
意外と、ビジネスパーソンの方でもわかっていない人もいると思います。パフォーマンスを出したいから、長時間仕事をして疲れて、疲れた頭でまた仕事して……。これってよくないサイクルですよね。
アスリートって、休むことも仕事なんです。食べることも仕事なんです。24時間365日、すべて「試合」でパフォーマンスを出すためにやってるんですよ。
でも、「仕事」に置き換えてみてください。仕事でパフォーマンスを出すために、コンディションを最大限に整えてますか?
サッカーで根を詰めてやったとしたら何が起こるかというと、ケガをするんです。そうすると試合に出られなくなるんです。だから、やるときはやるけどしっかり遊ぶ。
ごはんを食べることが仕事だと思ってるビジネスパーソンはいますか? 人間って食べることが仕事なんです。菌にもちゃんと「餌」を与えてあげないと働いてくれないんですよ。
――その後研究が実り、サプリメントやプロテインを発売するなど、商品開発にも成功しました。売上から浦和レッズアカデミーの強化を支援したり、eスポーツ選手のコンディショニングのサポートをしたり、少しずつ夢を実現されているのではないかと思いますが、その原動力は?
もちろんサッカー界、スポーツ界に貢献できたらいいなというのはありますが、すごく小さな世界で言うと、例えば、自分のパートナーが健康だったら嬉しいじゃないですか。
パートナーの体調が悪い、イライラしている。気を遣いますよね? 社会が幸せになる方法って、みんなのコンディションが整っていて、健康であることだと思います。
アスリートのデータから皆さんに何かを届けて、みんなが幸せになる。そんな世界を想像すると楽しくなるんです。それを実現していく歯車の一つになりたいと思っています。
アスリートの社会的地位ってまだまだそんなに高いわけじゃないと思うんです。スポットライトを浴びるような選手だけじゃなくて、多くのアスリートのデータも含めて提供できたら、「アスリートって、やっぱり自分たちにとって大切な存在だな」と思ってもらえるのではないかと思っています。
――鈴木さんのように、新しい世界に飛び込んでみたいなと思っている方に向けて、自分らしい道を切り開くヒントがあれば教えていただきたいです
人生は一度きり。だから、「やりたいことをやったらどう?」。
でも、本当にやりたいことなのかどうかは見極めた方がいいですし、「やりたくない仕事だからやらない」と言えば、「じゃあどうやって食べていくの?」という話になります。
現実に満足していないんだったら、現実をしっかりとやる中で、やりたいことを見つけるまで行動する。
見つけるのは自分しかいないんです。他人は自分の夢を見つけてくれないので。好きなことをやればいいと思います。何かもやもやしているなら、行動してみることが大事だと思います。行動すれば、周囲もヒントをくれると思います。
不満の原因がどこにあるのか、真剣に向き合うことも大事だと思います。上司が嫌いなのか、そもそも仕事自体が嫌いなのか、勤務形態が嫌なのか。いろんな要素を見極めて、現実と理想のギャップを埋めていくことができたらいいんじゃないかなと思います。
鈴木啓太さんの人生の「満足度」は…?
プロになったときは50%。1年目、試合に出られなくて15%まで落ちます。その後、試合に出るようになって55%。2004年、アテネ五輪の本大会に落選したときが25%。
2006年にJリーグ優勝したときは65%。日本代表に選出されたときは70%。2010~2011年は5%くらいでしたが、2012~2015年までは、75%ですかね。
――現在は?
30%ですかね。「満足」って、未来の期待値に対してのものだと思うので、その期待値が変われば満足度も変わりますよね。なので、設定したものに対して近づいたか近づいてないかっていう点で言うと、いまは全然近づいていないので、30%ですね。
だからこれからの「70%」が楽しみでしょうがないですよ。残りの70%は、「もっともっと僕たちは成長しなきゃいけないし、皆さんに貢献しなきゃいけないし、貢献できる」と思っているので、だからこそ(30%)ですかね。
満足するってことは多分死ぬことじゃないですか? 課題や、何か足りないなと思うことが大事で、満足するということは、「できるようになっている」状態ですよね。満足したら成長はないじゃないですか。できないことがあることから成長するので、できないことはたくさんある方がいい。
――そうすると100%になることはない?
ならないですね(笑)。満足したら死ぬしかないです。成長できないので。