「伝える」意識が何より大事。受験勉強の「和訳」「英訳」から卒業しよう

「伝える」意識が何より大事。受験勉強の「和訳」「英訳」から卒業しよう

ビジネス

外務省職員としてアラビア語の首相通訳を務め、外交交渉の現場に立ち会ってきた中川浩一さん。著書「総理通訳の外国語勉強法」を2020年1月に出版した中川さんに、忙しいビジネスパーソンに向けた外国語の習得術や世界で通じるコミュニケーション術を語ってもらいます。3回目の今回は、外国語学習における「日本語脳」の鍛え方がテーマです。

テキストに「日本語訳」があるだけでアドバンテージ。最大限活用しよう

こんにちは。2回目のレッスンでは、「インプット」より「アウトプット」、「英語脳」より「日本語脳」が大事というお話をさせていただきました。この考え方を基に、皆さんには「日本語」で、アウトプットのための「自己発信ノート」を作成してほしいとお願いしました。

当然ですが、一人一人、話したいことは違いますので、これはあなただけのオンリーワンのノートになります。あなたの生い立ち、家族のこと、趣味のこと、今担当しているプロジェクトのこと、顧客のことなど、内容は様々でしょう。

そこで、今回のレッスンでは、あなたが書いた日本語をどう外国語にしていくのかについて、お話させていただきます。

その前に、私のアラビア語学習の苦労話を聞いてください。約25年前、外務省に入省した私は、まさかの希望しない「アラビア語」を専門語学にするよう命じられました。

アラビア語は世界最難関と言われる語学です。なぜか。アラビア語の勉強を開始して、いきなりショックを受けました。なんと、アラビア語から日本語への辞書が当時はなかったのです。あるのはアラビア語から英語の辞書だけでした。

つまり、アラビア語を習得するには、一度アラビア語の意味を英語で調べ、それから英語の辞書で日本語にしなければならなかったのです。でも、この方法は危険ですよね。単語の意味は一つだけではないので、当然辞書で調べる過程で、どの意味なのか迷うという経験は皆さんもあると思います。

私はアラビア語から英語、英語から日本語にする過程で、結局元のアラビア語から日本語にした時点で、正確な意味にたどりつけないという経験を数多くしてきました。

それでは、英語はどうでしょうか。日本の学習テキストには、英語を勉強する際に「正しい日本語訳」があふれているではありませんか。アラビア語に限らず少数言語の学習者にとっては、「ずるい」、「ずるい」となる環境なのです。

でも逆に言えば、それは英語学習者にとっては大きなアドバンテージです。問題は、せっかくの「正しい日本語訳」を勉強にうまく活用できていないことなのです。

「逆転の発想」でテキストを使ってみよう

皆さん、これまでの英語の勉強では、まず英語を読んでから日本語訳を確認することが多かったのではないでしょうか。

これからは、「逆転の発想」でテキストを使ってみてください。テキストを、あなたが作成したアウトプットのための日本語の自己発信ノートを外国語にするための「ツール」、「材料箱」と考えてもらえないでしょうか。

これまでのようにテキストは与えられるものではなく、あなたが話したい内容の日本語の文章が入ったテキストを能動的に探して欲しいのです。

あるいは、あなたが持っている既存のテキストで日本語の文章を見ながら、自分の発信に使えそうな文章があればそれをそのまま、自己発信ノートに入れていくことでも結構です。

ですので、テキストは、日本語と英語が両方あるものを選びましょう。そこまで意識しなくても、ほとんどのテキストで日本語訳がついていると思います。そういうテキストをあなた自身で能動的に探していくことが重要なのです。

もし、テキストの日本語訳がすべてあなたの発信に使えそうなら、そのままパクって、英語にしてしまえばいいのです。とにかく、外国語の学習を、これまでの「受け身」から「発信」へと変えていくことが何より重要です。

「日本語脳」を強化するため、「日本語→英語」で学習しよう

皆さん、普段は意識されないと思いますが、英語の教科書、参考書って、かならずと言っていいほど英語が左、日本語が右にありますよね。そして、私たちは左側にあるものから読んでしまう。

そう、英語のテキストって、英語から先に見るのが当たり前になっているんです。それは、「英語でインプット」するという発想だからです。しかし、私がおすすめしたいのは、全く逆です。

これまでお伝えしてきたように、「日本語でアウトプット」することが学習の出発点です。なので、今まで使用してきたテキストをいったん、左右を逆にすることをおすすめします。

これからは、あなたのテキストには学習の出発点となる日本語を左側に置き、そして右側にそれに対する英語の文章を置いていただけませんか。

「訳す」のではなく、自由な発想で「変換」しよう

皆さん、これまで、英語を日本語にいちいち訳すから英語が話せない、あるいは、日本語を介するから英語が話せないのだと教わってきませんでしたか。

多くのビジネスパーソンが、中学から英語をはじめて高校受験、大学受験を経験してきたと思います。英語と言えば、「英文和訳」、「和文英訳」の比重は大変高かったと思います(最近はリスニングもありますが)。

でも、私は、日本語を介すること自体が問題なのではなく、「意思」のない、受け身の勉強に終始していたこと、そして、どうしても受験勉強の点数主義で、一言一句、対比させて訳さなければならないという勉強の仕方が、頭を固くしてしまったのではないかと思います。

このレッスンの目的とする、ビジネスでプレゼンしたり、コミュニケーションをとって商談を成立させたりする際に大事なのは、機械的な正確無比な訳ではなく、「伝える」ことが何より大事なのです。とにかく文章として相手に伝わるかということなのです。

私は、最終的にはアラビア語の首相通訳まで務めることができましたが、実は「通訳」という仕事も、一言一句、機械のように訳すのではなく、問われるのは「伝える」こと、そのために「変換する」、「置き換える」との発想を持つことなのです。

わかりやすく言うと、あなたの脳の中で、言いたいことの「イメージ」を持って、何が伝わればいいのかだけを考えることです。枝葉はなくても最初はいいのです。

通訳も一言一句、順番に訳そうなんて思っていると絶対に失敗します。そうではなくて、ある一文があったときに、それで何が伝わればいいのかという自由な発想でいると、スムーズに話せ、そしてそれが上達すれば結果的に、100%伝わるということになるのです。

細かな文法にはこだわらなくていい。まずは、恥ずかしがらずに話してみよう

英文法も、英文法学者を目指すわけではない限り、伝える「手段」にすぎません。なので、がちがちにならずに、恥ずかしがらずに発声していきましょう。

先日、タレントのパトリック・ハーラン氏(パックン)と仕事で、英語の勉強法について話す機会がありました。彼はよく講演で、「日本人は英語が『しゃべれない』のではなく、『しゃべらない』のだ」と言うそうです。

たとえば、「私のお父さんは銀行で働いています。」という日本語を変換する際に、「My father work bank.」とまで言えれば十分で、アメリカ人は三単現の「s」がなくても、前置詞がなくても、100%理解できるとのことでした。要は細かな文法は違っても、あなたが伝えたいことは伝わるということなのです。

では、たとえば、「今後ともどうぞよろしくお願いします。」という日本語の場合はどうでしょうか。英語のテキストなどには、「I hope to see you again.」と書いてあります。

どこにも「今後」にあたる英語、「よろしく」にあたる英語はありませんが、なるほど、結局言いたいのは、また会えることを望んでいるということなんだなと。このように、伝え方を自由に変換していく、これを私は「置き換える」力と考えています。

日本語で話したいことを素直に自由に英語に、単に置き換えていくだけ。これからは、もう少し、簡単に考え、リラックスして英語に取り組んでいきましょう。

bizble編集部作成
bizble編集部作成

次回は、このような考え方をベースにして、外国語としての自己発信ノートのレベルを高める方法と、スムーズに発声できるようになるノウハウについてお話ししたいと思います。

 

(このコラムは月1回掲載予定です)


編集部から:
外国語学習にまつわる中川浩一さんへの悩みや相談ごとを記事下のコメント欄でお寄せください。本コラムを通じて、中川さんに答えていただきます。

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