帰納法と演繹法を駆使するとお金が寄ってくる #43

帰納法と演繹法を駆使するとお金が寄ってくる #43

ライフ・マネー

朝日新聞社メディアビジネス局運営の金融メディア「START!」に掲載された人気連載をbizbleでも掲載。経済評論家の加谷珪一さんがお金の教養を伝えます。

物事の考え方には、大きく分けて「帰納法(きのうほう)」と「演繹法(えんえきほう)」という2つの種類があります。帰納法は高校の数学でも習いますから、正確な意味は分からなくても、どこかで聞いたことがあると思います。一方の演繹法は少しイメージしにくいかもしれません。どちらも大事な考え方ですが、お金と仲良くなるには演繹法を特にマスターした方がよいでしょう。

子どもでもフル活用している帰納法

帰納法というのは、複数の事柄を観察して共通項を見つけ出し、それを一般的な法則に落とし込むという考え方です。各県で販売した商品の売れ行きを分析し、北日本の売れ行きが良かった場合、この商品は「寒い地域でよく売れる」という一般法則を立てることができます。

もちろんそれだけが理由とは限りませんが、有力な手がかりになるのは間違いありません。

帰納法は多くの人にとって馴染みやすい考え方といってよいでしょう。多くの人が、無意識のうちに帰納法的な考え方を使っており、それは子どもであっても同じことです。

子どもはよくオモチャを親にねだる時、「サトシ君も持っているし、ケイコちゃんも持っているし、アキラ君も持っているよ」と説得しています。これはまさに帰納法を使って話を一般化しているわけですから、帰納法というのは小さい子どもでも本能的に実践できるわけです。

これに対して演繹法の考え方はまったく逆になります。演繹法というのは「AならばB」「BならばC」といった具合に論理をつなぎ合わせて最終的な結論を得る方法です。例えば「成果は努力に比例する」という論理があり、「私は努力している」という論理があると仮定すると、その先には「私は成果を出すことができる」という結論が得られます。

物事をうまく処理するためには、帰納法と演繹法をうまく使い分ける必要があるのですが、お金と仲良くなりたい人は演繹法のトレーニングをした方がより効果的です。その理由は帰納法ばかり使っていては、当たり前の結果しか得られないからです。

帰納法は非常に馴染みやすい手法ですから多くの人が日常的に使っています。暗記を中心とする日本型の受験勉強と親和性が高いことも、帰納法がビジネスで多用されることと無縁ではないでしょう。

帰納法はすでに起こったことを分析するのに適しているがゆえに、帰納法から得られる結論は常識的でつまらないものであることがほとんどです。

お金持ちになりたければ演繹法をマスターせよ

一方、演繹法をうまく活用すれば、ひとつの仮説から次々と新しい仮説を導き出せますから、新しいことにチャレンジする時には非常に役に立ちます。

他人と同じことばかりやっていては、人並みの成果しか得られないのは当然のことです。他人よりも高い成果を上げようと思ったら、より独創的な考え方が必要となりますが、こうした考え方は演繹法を駆使するからこそ得られるものといってよいでしょう。

著名な投資家であるジョージ・ソロス氏は、演繹法の重要性を説いた哲学者カール・ポパーの信奉者として知られており、帰納法から得られる予定調和的で常識的な結論を嫌い、演繹法で自らの投資戦略を打ち立てたと言われています。
演繹法を使えば他人とは違う視点で物事を捉えることができますから、確かに有利なのですが、その使い方には少し注意が必要な部分もあります。

演繹法をうまく活用するためには、それぞれの論理の普遍性が極めて重要となります。

先ほど例にあげたケースでは「成果は努力に比例する」という論理に普遍性がなければ意味がありません。努力と成果が比例しないものも少なくありませんから、そうしたケースにこの論理を当てはめてしまうと「私は成果を出すことができる」という結論は完全に誤りとなってしまいます。

演繹法を活用する場合には、それぞれの論理が本当に正しいのか十分に検証した上で使う必要があるでしょう。

では、その論理が正しいのかを知るためにはどうすればよいのでしょうか。皮肉なことですが、ここで必要となるのが帰納法です。複数の事例で同じ結果が得られればその論理は真実に近いと考えてよいでしょう。つまり帰納法というのは、演繹法で使う論理に普遍性があるのかを調べるためのツールですから、結局のところ両者をうまく使い分けられる人が最強になるという仕組みです。

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