前回は、ワクワクする企画はなぜ必要なのかということを話しました。今回からは、実際にどうやったらワクワクする企画をつくれるのか、という本題の「ワクワクをつくる企画術」をお伝えしていきます。
泡パーティーやバスタブシネマ、ドライブインフェス……。数々の心躍らせるイベントを仕掛けてきた体験クリエイター・アフロマンスさんが、“ワクワクをつくる企画術”を語ります。
「ワクワクをつくる企画術」は大きく3部構成で考えています。
第1部は、企画の中心となる「アイデア」について。
第2部は、アイデアを「実現させる方法」について。
第3部は、実現させるだけではなく、結果を出す、つまり「成功させる方法」について。
連載なので、書いていく中で変えるかもしれませんが、上記の内容はしっかりとおさえていきたいと思います。
今回は、「ワクワクするアイデアのつくり方」についてお話しします。
アイデア出しで陥る思考の罠。「正しいアイデア」≠「正解のアイデア」
「なんであの人は次々とアイデアが出るんだろう」
「ずっと考えててもアイデアが出てこなくてつらい」
この差は、生まれ持ってのセンスなのか?
私はそう思いません。
才能の要素がゼロとは言わないですが、そもそもアイデアの出し方を学んだ人、訓練した人はほとんどいないので、素人がノリで「アイデア出し」をしているような状況がほとんどだからです。
もちろんアイデアだけでお金がもらえるレベルはそれなりの経験と実績が必要になってきますが、「あの人はアイデアがポンポンでるね」と言われるくらいは簡単です。なぜならコツがあるからです。
そのコツの話に入る前に、まず大事なマインドセットをさせてください。アイデアを考えようという時には以下のことを頭に入れてからとりかかってください。
実は、私は年に1度、佐賀県庁に呼ばれ、企画の講師をしています。
毎回1部署1時間、11部署ほどを11時間かけて、企画の悩みを聞き、アドバイスをするという試練のようなことをやっています。
その他にも、様々な企業や行政の方とアイデアや企画について話すのですが、ほとんどの人が「正しい=正解」だと思い込んでつまずいています。
「正しいことが正解じゃない」
なんだか、謎かけのようになっていますが、要は
「(論理的に)正しい思考をする」癖がついていることが、ワクワクするアイデアが出ない一番の原因なのです。
先ほど「アイデアの出し方」について学んだ人がほとんどいない、という話をしましたが、逆に、日本全国ほとんどの人が学び、訓練した経験があるものがあります。
それは、論理的思考です。
「1+1=」 あなたの答えは?
「1+1=」は?と聞かれたら誰でも「2」と答えるでしょう。でも、実は1+1=の右に入るものは「100-98」でも、「10÷5」でもいいんです。
ただ、子供の頃にそんな答えを書いたら×をされていたと思います。
つまり、私たちは「答えにたどり着く最短ルートが正解」と考えるように訓練されて育っているのです。
これをアイデア出しに例えてみましょう。
「より多くの人に商品を買ってもらう方法を考えてください」
多くの人が思いつくのは「値引き」「広告を出す」「人気コンテンツとタイアップ」「YouTuberやインフルエンサーに宣伝してもらう」など。
誤解のないように言うと、これらは間違ってはいません。ある意味、正しい。
しかし、本当にいい案なのか?もっとワクワクするアイデアはないのか?と言われれば、実はいくらでもあります。
それは1+1=は2以外の答えが思い浮かばないように、「正しい思考の罠」にハマって出てこないのです。まずは「正しいことが正解ではない」ことを頭に入れてください。
ワクワクするアイデアを出すコツ。「異質なものを組み合わせる」
そんなマインドセットをした上で、ワクワクするアイデアのコツをお伝えします。
一つ目は
これは、先ほども触れた、長年鍛えられた論理的思考から脱却する為のわかりやすい考え方の一つです。
多くの人は、アイデアを考えるときに、脳内で連想ゲームをしています。
例えば、メーカーの仕事で、新発売のポータブルスピーカーの宣伝をしようと思った時、あなたならどういう風にアイデアを考えていきますか?
多くの人は
「ターゲットに人気のアーティストとコラボしよう」
「どれだけ音がいいのか、専門家が聴き比べてみたとかどうだろう」
「部屋で楽しんでる様子を映像にして流すのはどうだろう」
とか、そんなことを考えます。
この時に、脳内で起こっていることが、実は連想ゲームだということはお気づきでしょうか?
そう。多くの人はアイデアを考える際、無意識に関連性の近いワードを探し、組み合わせようとするのです。
だからこそ、ありきたりで新しさに欠ける、間違いではないがワクワクしない、そんなアイデアしか出てこない。
異質なものをどうやって組み合わせるか
では、異質なものの組み合わせとはどういうことなのか?
私が手掛けた事例で、SONY(ソニー)のEXTRA BASSという低音が特徴のポータブルスピーカーの発売イベントとして企画した「低音卓球」をご紹介しましょう。
パッと見て、何が起こっている画像がわかりませんよね(笑)
低音卓球は、SONYのポータブルスピーカーEXTRA BASSが巨大化した卓球台です(デザインは当時のものなので現在は変わっています)。
スピーカーの左右にあるウーファー部分が筒状の卓球台になっていて、360度跳ね返る未体験の卓球体験ができます。
また、プレイヤーの背面にはEXTRA BASSが設置されていて、音楽と共に卓球を楽しむことができます。
このアイデアに至るプロセスを少し話すと、ポータブルスピーカーの利点「どこでも楽しめること」からスタートしました。
そこで、通常のイベントスペースではなく、意外性のある場所やシーンとの組み合わせを検討し、その中の一つが卓球場でした。
またここで、組み合わせの精度があがるポイントとして
「異質なものだけど、どこか特徴がリンクする」
という視点があります。
今回で言えば、ただ卓球場でスピーカーを鳴らしても、体験としての面白さが足りないなと思い、卓球台自体の形を変えることを検討し、色んな形を試行錯誤している中で、筒状の卓球台を2つ置くことで、巨大なスピーカーになる、というアイデアに至りました。
イベントは告知段階から話題となり、連日1時間半待ちの状態になりました。
また、イベント後にはバンダイナムコアミューズメントから声をかけていただき、2021年4月現在は、大阪のVS PARKに常設され、継続的にEXTRA BASSの体験の場となっています。
その他にも、私が手掛けた事例を振り返ると、異質なものの組み合わせは多く、
佐賀県の有明海の干潟をPRするためにつくった「干潟」と「バー」を組み合わせた「GATA-BAR from SAGA」や、佐賀県の伝承芸能のPRで、「伝承芸能」と「絶景スポット」を組み合わせた映像企画「絶景伝承芸能」など
それぞれ連想ゲームではパッと出てこなさそうなキーワードを組み合わせたアイデアになっていることがわかります。
前述の「特徴をリンクさせる」話のように、なんでも組み合わせればいい訳ではなく、様々な条件のもとにふるいにかけられ、いいアイデアと呼べるものの数は絞られます。
また、経験によって、いい組み合わせを短時間で見つけることもできるようになります。
ただ、まずは異質なものの組み合わせを色々試してみてください。
慣れないと、頭で考えると異質なワードを想起することすら難しいです。
いろいろなワードをひたすら組み合わせてみる
私が若い頃にやったのは、図書館や本屋さんにいって、自分の持っているワードと背表紙のワードを端から端までひたすら組み合わせてみたりしました。
100個くらい組み合わせると、面白い組み合わせが1つくらいは出てきます。
セレンディピティ(偶然の素敵な出会い)な組み合わせのアイデアを楽しんでみてください。
今回は、最初のマインドセットとして「正しいこと≠正解」ということ、そして、「異質なものの組み合わせ」がワクワクするアイデアにつながるという話をさせていただきました。
次回は、この続きとして、ワクワクするアイデアを考える、第二、第三のコツについてお話したいと思います。
また、本コラムを読んだ感想や気づき、こんな話が聞きたいなどあれば、Twitterでこの記事と共に「#ワクワクをつくる企画術」で投稿してもらえればチェックしますので、よろしくお願いします!
(このコラムは月1回掲載予定です)