経済的自由を得ることの意味 #6

経済的自由を得ることの意味 #6

ライフ・マネー

朝日新聞社メディアビジネス局運営の金融メディア「START!」に掲載された人気連載をbizbleでも掲載。経済評論家の加谷珪一さんがお金の教養を伝えます。

前回のコラムでは、消費することで他人から注目されたいという無意味な承認欲求から自由になり、資産形成そのものに達成感を得ることが大事だ、という話をしました。今回はその話をさらに応用して、「経済的な自由」を得ることの意味について考えてみたいと思います。経済的自由とは何か?という問いは、まさにお金に関する教養に直結する話ですから、ぜひ皆さんも一緒に考えてください。

お金が欲しいという思う理由は人それぞれです。筆者は、お金を稼ぐ究極的な目的は、経済的な自由を得るためだと思っています。人生における選択肢を増やすため、と言い換えることもできるでしょう。

自身の生活に幸福感を感じられない人は、たいていの場合、人生に多くの選択肢を持っていません。選択肢がないために、ひとつの生き方を受け入れるしかなく、これが心の持ち方にマイナスの影響を及ぼすのです。

お金持ちの多くは、無理な住宅ローンを組むことに対して否定的な意見を持っています。その理由は、借金や持ち家そのものを否定しているのではなく、無理な住宅ローンを組むことによる「選択肢の消滅」を危惧しているのです。

35年といった長期の住宅ローンを組めば、実際に住宅取得にかかる費用の4割分もの利子を追加で支払わなければなりません(2%固定の場合)。4000万円を借りた場合には、利子だけで1600万円にもなってしまいます。

それだけなら単純に金額の話ですが、問題はそこではありません。無理なローンを組んでしまうと、20年から35年という長期にわたって、実質的に人生の選択肢が奪われてしまいます。お金持ちの人はこのあたりに非常に敏感であり、そうであるが故に長期の住宅ローンに否定的なのです。

年収から生活費を差し引いた残りの金額のほとんどを住宅ローンに費やしてしまった場合、人生の選択肢はほぼゼロとなってしまいます。リストラで給料が大きく減ってしまうような事態になったら、最悪の場合、住宅を諦め、残りのローンの支払いを一生涯、続けなければなりません。

また、サラリーマンは、住む場所を自由に選べないことがほとんどです。筆者もサラリーマンだった時代、住宅ローンを組んだ途端に転勤を命じられた人を何人も見てきました。せっかく家を買っても、マイホーム生活を楽しむことができない場合もあるのです。

転職したり、独立したりするには、かなりのエネルギーが必要となります。起業ということになると、さらにハードルが上がります。目一杯の住宅ローンを組んでしまうと、こうした事態に対処することが難しくなります。運命を受け入れる以外に、方法がなくなってしまうわけです。

毎日の生活で大きな不便や不満がなくても、人生の選択肢が制限されているという事実は、心の持ち方に少なからず影響を与えることになります。何となく不安だという感覚は、こうしたところに起因することが多いのです。

まとまった資金があると、精神的に大きな余裕を持つことができます。現実には多少の資産があるからといって、望まない転勤を拒否したり、すぐに転職したりするという人はいないでしょう。しかし、「いつでも会社を辞めることができる」という余裕は、強力な武器になります。まとまったお金には、自身が望まない事態に直面した時の受け止め方を変える効果があるのです。

本コラムでは、お金で幸せを買うことはできないと主張してきました。確かのその通りなのですが、まとまった資金があれば、自由を買うことは可能です。自由は幸福に直結するわけではありませんが、幸福な人生を送るための重要なツールになり得ます。その意味で、お金を貯めることには大きな意味があるのです。

もちろん自由というものは、お金だけで得られるものではありません。どこでもやっていけるというスキルや、イザという時に頼りになる友人など、自身が持つ総合的な資産が、自由をもたらしてくれます。お金はその中のひとつの手段と考えればよいでしょう。

ライフ・マネー

働くあなたへ シネマサプリ

「コンビニ限界説」に挑む

新・若者進化論