4月、“ゼロ”から外国語をはじめよう。元首相通訳が教える学習のカギは「出口戦略」と「アウトプット」

4月、“ゼロ”から外国語をはじめよう。元首相通訳が教える学習のカギは「出口戦略」と「アウトプット」

ビジネス

外務省職員としてアラビア語の首相通訳を務め、外交交渉の現場に立ち会ってきた中川浩一さん。著書「総理通訳の外国語勉強法」を2020年1月に出版した中川さんに、忙しいビジネスパーソンに向けた外国語の習得術や世界で通じるコミュニケーション術を語ってもらいます。1回目は、外国語学習の「出口戦略」と「アウトプット」の重要性についてです。

留学経験もなく、帰国子女でもない。24歳でアラビア語をはじめて首相通訳になるまで

こんにちは、中川浩一と申します。このコラムでは、元外交官・元首相通訳として、ビジネスパーソンに向けた外国語習得のノウハウのみならず、世界で通じるコミュニケーション術も伝えていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

みなさん、「外国語」というと、てっきり「英語」と思われるかもしれませんが、私が首相通訳を務めた言語は「アラビア語」です。24歳で外務省に入省する際に、全く希望しないアラビア語を専攻するよう命じられたのです。アラビア語は、アメリカの国務省の語学付属機関で世界最難関と位置付けられる言語です。

みなさんも、ミミズが這ったような字を書くことはイメージがあるかもしれません(ちなみに右から左に書きます)。このアラビア語を、私は字を書く練習や発音練習から始め、エジプトでの語学研修を経て、4年8か月後に、歴史に名を残す人物であるパレスチナ解放機構(PLO)のアラファト議長の通訳を務めるまでになりました。

1998年12月、パレスチナのガザ地区でPLOのアラファト議長と日本政府要人の会談で通訳を務める中川浩一さん(左端)=本人提供
1998年12月、パレスチナのガザ地区でPLOのアラファト議長と日本政府要人の会談で通訳を務める中川浩一さん(左端)=本人提供

その4年後には、小泉純一郎首相(当時)の通訳も務めることができました。英語でいえば、中学1年生で始めたとして、高校2年生で外交交渉の通訳、大学3年生で首相通訳をやるといったイメージです。

2004年11月25日、首相官邸での小泉首相とクウェートのジャビル副首相の会談で通訳する中川浩一さん(中央)=本人提供
2004年11月25日、首相官邸での小泉首相とクウェートのジャビル副首相の会談で通訳する中川浩一さん(中央)=本人提供

ここで、私がお伝えしたいのは、首相通訳になった自慢ではまったくなく、24歳でゼロから新しい外国語をはじめてもできるようになる、というメッセージです。私は、海外への留学経験もなく、帰国子女でもありませんでした。

この4月から、新社会人のみなさんだけでなく、社会人歴をある程度積んだビジネスパーソンも、新たに何かに挑戦しようという気持ちになっているのではないかと思いますし、そうあって欲しいと思います。英語をもう一度やり直そう、あるいは新しい言語へのチャレンジを決めた方もいるかもしれません。そういう方に、私のアラビア語の学習の軌跡と、苦難の道のりのなかで編み出した勉強法を包み隠さずこのコラムでお伝えしたいと思います。

「何のために学習する?」「何を話したい?」 自分の“出口”を見つめ直そう

では、具体的にどう外国語学習をはじめればいいのか。みなさんに、次回までにやっていただきたい、二つのお願いをしたいと思います。それは、二つの「出口」を描いていただくことです。

昨年、新型コロナウイルスへの対応の中で、さかんに「出口戦略」という言葉が使用されたと思いますが、外国語の習得もまさに「出口戦略」がないといけないということです。

一つは、あなたは「何のために」外国語をやるのかを考えることです。それはビジネスの交渉、プレゼンのためか、海外留学のためにやるのか、研究論文を書くためか、あるいは単に旅行のためなのか。出口(目的、目標)を明確にすることが、語学学習で本当に必要なことです。

なぜなら、目的によって学習法が大きく異なるからです。これができないと、あなたは大海に地図もコンパスも持たずに漕ぎだすか、あるいはいきなり全く違う方向に進むことになりかねません。

もう一つは、じゃあ目的が決まった上で、あなたはどこの国の人と何を話したいのかという出口です。

「みんながやってるから」、「これまで少しはやってきたから」、「なんとなく英語をやろう」では、決してあなたの英語が伸びることはないでしょう。「なぜ英語なのか」ということも改めて考えていただきたいと思います。中国人とビジネスするのに英語をやる必要はありませんよね。そして、学ぶべき語学が決まったら、次は何を話すのかということです。

bizbleb編集部作成
bizbleb編集部作成

なぜ、こういうことを改めて言うかというと、私はゼロから始めたにもかかわらず、エジプトでの語学研修の間は、いきなり、ひたすらプレゼンをさせられたからです。

アラビア語ができないのに毎日プレゼンなんて本当に過酷な日々でした。でもコーナーに追い込まれて「話すしかない」という状況になると、何を話すかという内容を先に考えて、それに見合う単語を調べ、文章を作って口から発信していく。つまり、「出口」を先に見つけて、「入口」に向かうしかなかったのです。

でも、それが結果的に、「出口」を先に考えて、そこから逆算して必要なものをインプットしていく学習スタイルを生み出したんです。いわゆる「逆転の発想」です。

これが、日本の受験英語だと、最初に大量にインプットしてしまいますよね。でも、どれがアウトプットに使える単語なのかわからないうちに次々とインプットしてしまうので、結局アウトプットのときに苦労するのです。

典型的な受験勉強をして、留学経験もない、私の英語もまさにそうでしたが、アラビア語を通じて発見した学習法に変えた後は、英語もできるようになって、結果的にアメリカ人と外交交渉ができるまでになりました。

これから、英語をやり直したい方にもまさにこの方法をお勧めします。新しい言語を始める方は、24歳のアラビア語の私とこれから競争しましょう。

「どう困っているか」みなさんの悩みごとを教えてください

私は昨年、本を書くにあたり、英語をはじめとする全語学に通用する内容にするため、日本の英語学習の本やテキストがどのような内容なのかを徹底的に調べました。

そこで感じたのは、日本の英語学習本やテキストは、英語を仕事として長く使ってきた人か、もともとできる人(英語教師、同時通訳者、帰国子女など)が書いたものか、あるいは小手先の技術を述べただけのものがほとんどではないかということです。

私は、このようなもともとできる人が書いた本やテキストでは、読者と同じ目線に立つことが難しいため、英語を本当にやり直したい、自由に話せるようになりたいと思っている人も、途中で挫折してしまう可能性が高いのではないかと思いました。一方で、上級者への道をはなから諦め、「中学英語で十分」、「英語はツールでしかない」などと、ことさら主張する方もいます。

でも、みなさん本当は、特にビジネスパーソンの多くは、「ちょっと話せれば満足」とは思っていないし、小手先でなく自由に、そして最終的にはネイティブのように話したいと思っているのではないでしょうか。

みなさんの中でも、英語がなかなか話せるようになれないという方は多いと思いますが、それでも私の24歳の時のアラビア語と比べれば、はるかに進んでいるはずです。英語のアルファベットは書けて、読めて、話せますよね。自信を持ってください。

私は、社会人になって本当にゼロから始めたので、大人になってできない苦労はいやというほど分かります。でもそのできないところから、どう這い上がっていくかという経験もたくさんしています。これだけは自慢できます。だからこそ、私は上から目線ではなく、徹底した下から目線で、皆さんのやるせない感情や苦労を分かち合いながら、それでも突破口を開く方法をお伝えしたい、そんな思いでこのコラムを書いています。

ですので、みなさんには「どう困っているか」といった悩みを率直に具体的に私に教えてください。「やる気が出ないんです」という相談でも結構です。とにかく私と一緒に乗り越えていきましょう。

 

(このコラムは月1回掲載予定です)

 

編集部より:

外国語学習にまつわる中川浩一さんへの悩みや相談ごとを記事下のコメント欄でお寄せください。本コラムを通じて、中川さんに答えていただきます。

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